飾り切りとは?適した包丁や代表的な素材(人参/きゅうり/蓮根/椎茸)でのやり方をわかりやすく解説!

飾り切り

飾り切りは野菜やきのこを美しく切り込み、見た目にも楽しめるようにする日本料理独特の切り方です。

食材自体の彩りや形、模様を活かし、料理をより華やかに演出するのが飾り切りの目的です。

飾り切り

今回は飾り切りに適した包丁をお伝えした上で、代表的な素材の飾り切りのやり方についてお伝えしていきたいと思います。

目次

飾り切りの歴史

飾り切りの歴史は、日本料理のなかでも古くから行われてきた美しい包丁技術で、その歴史は室町時代にまで遡ります。

武家や宮中行事の影響(室町~安土桃山時代)

日本の食文化は、もともと貴族や武家の儀礼・饗宴の場で発展してきました。

料理を美しく見せるために、食材に意匠を凝らす風習が生まれ、切り方にも工夫が施されるようになりました。

江戸時代の料理書や本膳料理の発展

江戸時代になると、庶民の食文化が花開くと同時に、上流階級のあいだでは「本膳料理」という正式な献立形式が確立。

献立の品数が増えるなかで、食材を季節の花や動植物に見立てる飾り切りがますます洗練されました。江戸時代に出版された料理書にも、飾り切りの技法が数多く紹介されています。

会席料理・割烹の洗練(明治~大正時代)

明治以降、西洋文化の影響を受けながらも、料亭や割烹料理店では日本古来の技法をさらに洗練。

客をもてなすための趣向として、飾り切りが欠かせない演出技術となりました。

現代への継承と家庭料理への普及

かつては専門の料理人による高級料理やハレの日の行事食に限られていた飾り切りも、次第に家庭料理の場にも広がっていきました。

現在では、煮物・和え物・刺身のつまなど、ちょっとした料理の彩りアップとして、家庭でも気軽に取り入れられるようになっています。

飾り切り

飾り切りに適した包丁とは?

飾り切りを行う場合は、以下のような包丁が適しています。

一般的には、ペティナイフを用いて細かい飾り切りをすることが多いです。

慣れてきたらうす刃包丁や小出刃包丁も使い分けると作業がしやすくなります。

ペティナイフ

ペティナイフ

小さく扱いやすい包丁で、細かい作業や複雑な切り込みに向いています。

にんじんやきゅうりなど、野菜を少量飾り切りするときに便利。

菜切包丁

菜切包丁

刃が薄く、野菜を切るのに特化しているため、切り口がきれいに仕上がります。

食材を大きく切り分けてから飾り切りに使うこともできます。

小出刃包丁

小出刃包丁

小ぶりの出刃包丁で、厚みがあるのでかたい食材を切る際に安定感があります。

にんじんなど硬めの野菜に飾りを入れるとき、刃がしっかりしていると力加減がしやすく、切り込みを入れやすいです。

それでは代表的な食材の飾り切りの方法についてお伝えしていきます。

にんじんの飾り切り

ねじり梅

ねじり梅

お正月料理や煮物の飾りによく使われる、梅の花を模した飾り切りです。

作成方法

1.にんじんを5~7mmほどの厚さに輪切りにします。
2.輪切りの外周に5か所の切り込みを入れ、梅の花びらを作るイメージでカーブを整えます。
3.花びらと花びらの間の角を、ペティナイフで優しく丸みをつけるように削ぎます。

葉っぱ形

葉っぱ形

サラダや付け合わせに重宝する切り方です。

作成方法

1.厚めの斜め切り(5mm程度)にしたにんじんを用意。
2.長辺を上にして置き、外側から葉脈を作るようにV字やU字に切り込みを入れます。
3.形を整えて葉っぱのような形に仕上げます。

きゅうりの飾り切り

蛇腹切り

きゅうりの蛇腹切り

漬物やサラダなどに使うときゅうりの断面に模様ができ、見た目が面白い飾り切りです。

作成方法

1.きゅうりの表面をきれいに洗い、水分をふき取ります。
2.きゅうりをまな板に置き、片側から斜めに包丁が下まで貫通しないように切れ込みを入れます。刃先が8~9割程度入り込むイメージ。
3.半回転(裏返し)させ、今度は表面とは垂直方向になるように切れ込みを入れます。
4.これをきゅうりの全体に繰り返すと、上下に蛇腹のような模様ができます。

木の葉切り

木の葉切り

きゅうりを木の葉の形に飾り切りしたものでサラダや刺身のつまに添えると彩りが映えます。

作成方法

1.きゅうりを斜めに5~7mm厚にスライスする。
2.スライスの外周を葉っぱ型に軽く整える。
3.中心に縦の切れ込み(葉脈)を浅く入れ、そこから左右に小さな葉脈を数本加える。
4.全体のバランスを見ながら、先端や外周を少しずつ削ぎ、葉っぱらしく仕上げる。

しいたけの飾り切り

十文字切り

しいたけの十文字切り

煮物や焼き物に使う場合に、しいたけに切り込みを入れることで味が染み込みやすくなるとともに、見た目にも立体感が出ます。

作成方法

1.石づきを切り落とし、しいたけのカサの表面を上に向けます。
2.カサの中央に向けて、包丁の先で十文字になるように切り込みを入れます。カサを貫通しない程度に、深さは3~5mmほど。
3.表面に切り込みが入ったら、そのまま火を通すと、切り込み部分が開いてきれいな模様が出ます。

亀甲切り

椎茸の亀甲切り

亀の甲羅のような六角形をイメージした切り込みです。大きめのしいたけを使う場合にオシャレな見た目になります。

作成方法

1.しいたけの表面を確認し、六角形が描けるように下書きをイメージします。
2.包丁の先を使って、中心から外側に向かって放射状に切り込みを入れます(だいたい6方向)。
3.放射状の線をつなげるようにして、小さな六角形ができるよう切り込みを調整します。

大根の飾り切り

菊花大根

菊花大根

輪切りの大根に細かな切れ込みを入れて、菊の花のように仕上げた飾り切り。酢の物や刺身のつまに添えると華やかさがアップします。

作成方法

1.大根を1~2cm厚に輪切りし、皮をむく。
2.厚みの半分ほどの深さで縦横に細かい切れ込みを入れる(貫通させない)。
3.外周を花びら風に丸く削って整える。
4.水や甘酢にさらすと花びらが少し開き、見栄えが良くなる。

梅花大根

梅花大根

輪切りの大根を梅の花に見立てて作る飾り切り。お祝いの席やお正月料理などに彩りを添えます。

作成方法

1.大根を1cm厚の輪切りにし、皮をむく。
2.外周に5か所程度の切り込みを入れ、梅の花びらを作るように丸く削り整える。
3.中央に浅い飾り包丁を入れて、繊細な模様をつける場合もある。
4.水または甘酢に漬けて少ししんなりさせると、形が落ち着いて風合いが増す。

蓮根の飾り切り

花形れんこん

花形れんこん

切り口がもともと花のような形のれんこんを、さらに美しく飾り切りしたもの。天ぷらや酢の物、煮物など幅広い料理に映える。

作成方法

1.皮をむいたれんこんを5~7mm厚に輪切りする。
2.外周の凹凸を少し深めに削り、花びらを際立たせる。
3.穴の周囲(内側)に浅く切れ込みを入れて、模様を強調するとより華やかに。
4.酢水にしばらく浸けて色止めすると、白さが際立つ。

蝶々蓮根

蝶々蓮根

蓮根の穴を利用して、まるで蝶々が羽を広げているように見立てた飾り切り。華やかな見た目が楽しめるため、酢の物や煮物、揚げ物にもおすすめ。

作成方法

1.皮をむいたれんこんを5~7mm厚に輪切りする。
2.穴と穴の間に小さな切れ込みを入れて、周囲の厚みをやや薄く調整する(羽の繋ぎ目部分が動きやすくなるように)。
3.片側の穴同士を外周に向かって切り離し、れんこんを上下にそっとずらすと、羽を開いた蝶々のような形になる。
4.酢水に浸してアクを抜いてから好みに応じて調理する。

矢車蓮根【歯車切り】

蓮根を矢車(やぐるま)=「風車」のように見立てて切り込みを入れる飾り切り。おせち料理やお祝い料理の飾りとして映える。

作成方法

1.皮をむいたれんこんを5~7mm厚の輪切りにする。
2.1枚の輪切りに対して、外周の円周部分を放射状(穴に向かって)に数か所切り込む。切れ込みは穴まで貫通しない程度の深さで入れるのがポイント。
3.切り込みを入れた部分を交互に少し外側へ押し出すようにずらすと、風車状に立体感が生まれる。
4.酢水に浸けてアク抜き後、煮物や酢の物に仕上げると、模様がより引き立つ。

まとめ

飾り切りは、日本料理で野菜やきのこを美しく加工し、料理の見た目を華やかにする技法です。

飾り切りに適した包丁としては、細かな作業に向くペティナイフや、野菜の切り口を美しく仕上げる菜切包丁、小ぶりで硬い食材に適した小出刃包丁があります。

飾り切りは様々な素材で使われています。代表的なものとして人参の「ねじり梅」や「葉っぱ形」、きゅうりの「蛇腹切り」や「木の葉切り」、しいたけの「十文字切り」や「亀甲切り」などがあり、各食材の特徴を活かした多彩な技法が存在します。

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