恐ろしく切れる包丁の鋼材「SPG STRIX」を解説!硬度などの特性は?

2024年に最強の鋼材が発表されました。それが今回お伝えするSPG STRIX(スーパーゴールドストリクス)です。

当サイトで取り上げた鋼材一覧の評価をご覧ください。最高級の切れ味と持続性(刃持ち)を誇りながら、ステンレス鋼並みの錆びにくさと炭素鋼並みの研ぎやすさも保持する最強のスペックとなっています。

SPG STRIXの高い性能

本日はSPG STRIXについて以下の点を中心にお伝えしていきたいと思います。

◯ どこで製造されている鋼材なのか?
◯ どのような特徴をもっているのか?それが何故なのか?
◯ SPG STRIXを使ったおすすめの包丁はどれか?

目次

SPG STRIXは武生特殊鋼材株式会社が製造

SPG STRIXは武生特殊鋼材株式会社が開発した金属素地強化型ステンレス粉末鋼です。

同社は、福井県越前市に拠点を置き、金属の合わせ板(異種金属接合材料)の製造を行っています。

家庭用から工業機械用まで、刃物用材料をはじめ、産業用材料、工芸材料など幅広い分野で独自の製造販売を展開する、日本でも特異な独創的メーカーです。

項目詳細
社名武生特殊鋼材株式会社
所在地〒915-0857 福井県越前市四郎丸町21-2-1
設立昭和29年10月
資本金5,000万円
代表者代表取締役社長 河野通郎
社員数54名
事業内容– クラッドメタルの受注生産販売
– オリジナル刃物鋼「V鋼シリーズ」
– 金属受託加工
– クラッドアート
月産能力– 熱間圧延:120t
– 冷間圧延:100t

SPG STRIXを含めて以下の包丁用の鋼材を製造しています。

武生特殊鋼材株式会社は、包丁用の鋼材として以下のオリジナル刃物鋼を製造しています。

鋼材名種類特徴
V金10号(VG10)ステンレス刃物鋼高い硬度と耐食性を持ち、切れ味と持続性に優れています。
スーパーゴールド2(SPG2)粉末ステンレス鋼粉末冶金法により製造され、均一な組織と高硬度、耐摩耗性、耐食性を兼ね備えています。
コバルトスペシャル(CoSP)合金鋼高い硬度と靭性を持ち、切れ味の持続性が特徴です。
V金1号(VG1)ステンレス刃物鋼バランスの取れた性能で、研ぎやすさと耐食性を備えています。
V金5号(VG5)ステンレス刃物鋼VG1よりも高い硬度を持ち、耐摩耗性が向上しています。
V金7号(VG7)ステンレス刃物鋼高硬度と耐食性を持ち、切れ味が長持ちします。
V金10W(VG10W)ステンレス刃物鋼VG10にタングステンを添加し、さらに硬度と耐摩耗性を高めています。
V金XEOS(VG XEOS®)ステンレス刃物鋼高い耐食性と硬度を持ち、特殊な用途に適しています。
スーパーゴールド ストリクス(SPG STRIX®)粉末ステンレス鋼高硬度でありながら靭性も兼ね備え、切れ味と耐久性が優れています。

金属素地強化型ステンレス粉末鋼とは?

SPG STRIXは金属素地強化型ステンレス粉末鋼です。

金属素地強化型ステンレス粉末鋼とは、ステンレススチール(不錆鋼)の基材(母材)をベースにしながら、粉末冶金技術を用いて微細かつ均一に硬質粒子(炭化物など)を分散させ、強度・耐摩耗性・靭性・耐食性を高い次元で両立させた特殊鋼のことを指します。


「金属素地強化」というのは、ステンレス鋼の母材の中に強度や耐摩耗性を高める成分を加え、それらを微細均一に分散させることで、基材そのものを強化する技術を意味します。

通常の粉末ハイス鋼との共通点と相違点をお伝えします。

粉末ハイス鋼との共通点

粉末ハイス鋼との共通点は以下となります。

項目共通点
製造法いずれも粉末冶金技術(PM法)を用いる。
→ 微細で均一な組織が得られ、不純物の偏りが少ない。
耐摩耗性微細炭化物が分散しやすいため、従来の鋼材よりも耐摩耗性に優れる
強度・靱性粉末冶金特有の組織の均一性から、強度と靱性のバランスが従来材より優れる。
加工性粉末冶金により、焼入後の仕上げ加工で、比較的高精度の仕上げが可能(従来材よりは加工しやすい)。

粉末冶金の工程について補足的に説明しておきます。粉末冶金はまず混ぜ合わせる金属を粉末にして混ぜ合わせます。

金属を粉末にして混ぜ合わせ

混ぜ合わせた粉末を圧縮して成形体を形成します。

混ぜ合わせた粉末を圧縮

成形した成形体を金属の融点以下の温度で焼いて焼結させます。

混ぜ合わせた粉末を圧縮

粉末ハイス鋼との相違点

通常の粉末ハイス鋼との相違点は以下となります。

金属素地強化型ステンレス粉末鋼は基材にステンレス鋼を仕様しながらも粉末ハイス鋼と同じく高い硬度を維持しています。さらに粉末ハイス鋼に比べて高い耐食性(さびにくさ)を有していることが大きな違いといえるでしょう。

項目金属素地強化型ステンレス粉末鋼粉末ハイス鋼
基材の性質– ステンレス鋼をベースに、高クロム含有量+合金元素で「耐食性+強度・耐摩耗性」を同時に狙う。
– 「錆びにくさ」を重視した組成設計。
– 高速工具鋼(ハイス鋼)をベースに、タングステン・モリブデン・バナジウムなどを多く含有。
– 主に「高温下での強度・硬度保持(耐熱性)」「耐摩耗性」を重視した組成設計。
耐食性– 母材がステンレスのため、非常に高い耐食性を有する。
– 錆や腐食に対して強い環境下での使用に適している。
– 工具鋼がベースのため、ステンレスほどの耐食性はない。
– 一部耐食性を持つグレードもあるが、一般的には耐食性は限定的
耐摩耗性– 粉末冶金で分散させた微細炭化物により、高い耐摩耗性を実現。
– 「耐食性」と「耐摩耗性」を両立。
– 元々「耐摩耗性の高さ」を目的に作られているため、こちらも高い耐摩耗性を持つ。
– 特に切削工具や金型など高い摩耗負荷の環境で活躍。
特徴/目的– 「錆びにくさ」を最優先しながら強度・靱性・耐摩耗性を高める。
ステンレス+粉末冶金のメリット(高耐食・微細組織)を活かす。
– 工具鋼としての性能(高温強度・耐摩耗性)を最優先。
高速切削性能長寿命を重視。
価格・入手性– 高価な素材(合金元素+粉末冶金プロセス)であり、一般のステンレス鋼よりもコストは高い。
– 特殊用途向けで市販流通量は限られる。
– 通常のハイス鋼より高価だが、工具鋼としては実績が多く比較的流通量がある。
– 近年は需要拡大により入手性も安定しつつある。

SPG STRIXの特徴

ではここまでを踏まえてSPG STRIXの特徴についてみていきましょう。

高硬度で最高の切れ味を実現

SPG STRIXの焼入硬度はHRC65です。これは青紙スーパーと同レベルの硬度となっています。

包丁の鋼材のHRC硬度
焼入硬度とは?

焼入硬度(やきいれこうど)とは、鋼材を焼入れ(加熱後の急冷)した直後、または焼戻し後の最終段階で測定される硬さのことです。一般的に「焼入れを施した鋼の硬さ」と言い換えられます。


この高い硬度により最高の切れ味と耐久性が特徴となっています。

優れた耐食性(錆びにくさ)

通常、硬度が高い鋼は錆びやすいという特徴があります。

しかし、さきほどお伝えした通りSPG STRIXは金属素地強化型ステンレス粉末鋼なのでステンレス鋼をベースにしており錆びにくいという特性を備えています。

青紙鋼や白紙鋼などの炭素鋼や炭素鋼をベースにした従来の粉末ハイス鋼の最大の弱点である耐食性を回避しているのが大きな特徴ですね。

SPG STRIXの優れた耐食性

研ぎやすさも兼ね備える

SPG STRIXは金属素地強化型ステンレス粉末鋼なので、従来の粉末鋼のような硬い金属がなくても高い硬度を実現できています。

研ぎ易さと刃付け性を両立させる「金属素地硬さ」

そのため、炭素鋼のような研ぎやすさまで保持しています。

特徴まとめ

特徴をまとめると冒頭の以下の表になります。

「切れ味」「刃持ち」「研ぎやすさ」「錆びにくさ」の全てで非常に高い性能を備えており最強の鋼材となっています。

SPG STRIXの高い性能

SPG STRIXを作ったおすすめ包丁!【フレア】全切(210・240)

SPG STRIXを使ったおすすめの包丁を紹介します。

實光包丁:【フレア】全切(210・240)
實光包丁:【フレア】全切(210・240)
210mm65,890円(税込)
240mm72,050円(税込)

實光刃物は大阪の堺にあるプロ向けの包丁を製造している刃物屋です。

【フレア】全切(210・240)は三徳包丁と牛刀包丁と同じく万能包丁で、「野菜」「肉」「魚」とあらゆるシーンで活躍するオッポンです。

芯材にSPG STRIXを仕様しながら、両サイドはニッケルダマスカス鋼です。

SPG STRIX特有の「切れ味」「刃持ち」「耐食性」「研ぎやすさ」を保持しながら、美しいダマスカス模様を兼ね備えたは實光刃物のハイエンド製品となっています。

柄はカーボンにオレンジを混ぜたオシャレなデザインとなっています。

レビュー①

この包丁は切れ味が素晴らしく、特に根菜類を切る際のストレスが全くありません。断面が非常に綺麗で、野菜の瑞々しさをそのまま感じられます。重さも気にならず、210mmサイズは家庭での使用にピッタリです。デザインの美しさも大きな魅力で、使うたびに料理へのモチベーションが高まります。初めての一本としても満足度が高く、料理がもっと楽しくなること間違いなしです。

レビュー②

初めてこの包丁を使いましたが、切れ味の良さに驚きました。特に硬い根菜類でもスムーズに切れ、料理の準備がスピーディーになります。重さは手に馴染む程度で扱いやすく、210mmは家庭用として最適なサイズだと感じます。また、刃や柄の美しさは所有する喜びを感じさせ、料理をする時間が特別なものになります。初めて購入する方にも自信を持っておすすめできる一本です。

まとめ

SPG STRIX®は、武生特殊鋼材株式会社が開発した高性能な粉末ステンレス鋼で、硬度HRC65という高い硬度を持ちながら、炭素鋼に匹敵する研ぎやすさを実現しています。

その優れた切れ味と耐久性は、プロの料理人から家庭の料理愛好家まで幅広く支持されています。また、耐食性や靭性にも優れており、メンテナンスの手間を軽減します。

SPG STRIX®を使用した包丁は、切れ味の持続性と扱いやすさを兼ね備え、調理作業の効率と品質を向上させる頼もしいツールとなるでしょう。

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