あなたは、包丁を握るたびに「もっと気持ちよく食材を切りたい」「どうせなら長く付き合える一本が欲しい」と感じたことはありませんか?
筆者もかつては、安価なステンレス包丁でトマトを切るたびに潰れてしまい、「切りにくい…」とストレスを抱えていました。
でも、ある日、老舗の鍛冶屋で“青紙鋼(あおがみこう)”という鋼材を使った包丁と出会い、その切れ味に惚れ込みました。驚くほどスパッと切れる感覚は、まるで自分の料理がレベルアップしたような高揚感さえ与えてくれたのです。
「青紙鋼」は中々聞き慣れない言葉だとは思いますが、他にも白紙鋼というものもあります。後述で詳しく解説します。それぞれのスペックを総合的に評価したものが以下となります。

この記事では、そんな青紙鋼の基本や白紙鋼との違い、さらに“青紙スーパー”というハイスペック版の特徴やデメリットまで、深く掘り下げてご紹介します。
「サビが心配」「メンテナンスが難しそう…」といった不安も含めて、実際にどんな使い勝手なのかを総合的に探っていきたいと思います。
関連記事:包丁の素材・種類を徹底解説|初心者でもわかる鋼材からステンレス、セラミックまでの選び方
青紙鋼とは? 読み方と「安来鋼 青紙」の基礎知識
青紙鋼の読み方は「あおがみこう」
漢字だけ見ると「せいしこう?」と思う方も多いかもしれませんが、正式には「あおがみこう」と読みます。ちなみにPCで「あおがみこう」と打っても一発で変換はされないため、一般的な用語ではないことがよくわかりますね。
日立金属が製造している「安来鋼(やすきこう)」という高品質鋼材の一種で、合金の配合バランスによって「白紙鋼」「青紙鋼」「黄紙鋼」などに分かれます。

日立といえばエレベーターや家電というイメージですが、包丁の素材を語る上でも企業としての存在感が光っていますね。
安来鋼(やすきこう)と青紙鋼の関係
安来鋼(やすきこう)とは、 島根県安来市の名を冠し、日本刀や刃物など高級鋼材の代表として世界的にも評価が高いです。

青紙鋼は安来鋼の中でも、クロムやタングステンなどを加えて刃持ち・耐久性・サビ耐性のバランスを高めた鋼材となっています。
青紙鋼 包丁の魅力:切れ味からサビ対策まで
なぜそんなに切れるのか?
まず第一に、高い炭素含有量が挙げられます。金属を硬く、鋭利にするうえで炭素は重要な要素であり、青紙鋼はこの炭素量が多めに設計されています。
合金元素の絶妙な配合も重要なポイントで、クロムやタングステンなどを加えることで、ただ硬いだけでなく、靱性(じんせい)=“粘り強さ”も確保しています。
結果として「切れるのに折れにくい」理想的な素材になります。
漫画・るろうに剣心の緋村剣心の逆刃刀も、相手の武器などを真っ二つにしつつも、その耐久性は折り紙付きでしたよね(イメージとしては逆刃刀ですが実際はどの鋼材を使っているかは不明です)。
青紙鋼 サビは本当に大丈夫?
ステンレスほどではないですが、使用後すぐに拭き取り・乾燥をすれば、過度にサビを心配する必要はありません。
少しマニアックな世界に突入する感じですが、むしろ“錆び色”を楽しむ人も存在します。

長い時間をかけて包丁の表面に生まれる“錆び色”を愛し、味わい深い相棒として育てる方もいます。鞄や財布の革の成長やジーンズの色落ちなどを楽しむように、包丁の世界でも錆色を楽しむ人がいるのです。
ここまできたらもう完全に「愛」ですよね。包丁を手にして幸福度が上がる点は筆者と同様です。
青紙鋼・白紙鋼との違いと青紙スーパーの特徴やメリット・デメリットを比較表で解説
包丁を選ぶ上で、「結局白紙と青紙、どっちがいいのだろうか?」と迷っている方のために、以下の表で代表的な安来鋼を比較してみましょう。

さらに詳しい比較は以下です。
項目 | 白紙鋼 | 青紙鋼 | 青紙スーパー |
---|---|---|---|
特徴 | 不純物が少なく切れ味重視 | クロム等が加わりややサビにくい | 更に合金を増やし、高硬度・高靱性 |
メリット | 極上の鋭い刃先が出せる | バランスの良い刃持ち&切れ味 | 長く刃が持ち、プロも愛用 |
デメリット | サビやすい、やや刃持ち短め | サビには注意が必要 | 硬い分、研ぎづらい / 価格が高い |
サビやすさ | △(結構しやすい) | △(白紙よりは多少マシ) | △(ステンレスほどではない) |
価格相場 | 手頃~中価格帯まで幅広い | 中価格帯~やや高め | 高級帯が多く、職人仕上げも多数 |
オススメな人 | 切れ味を徹底追求する人 | 切れ味+耐久バランス重視 | プロ・こだわり派、少し贅沢したい人 |
初手は基本的には白紙鋼で、徐々に青紙鋼に移行していくイメージだと思いますね。最終的にはそれぞれの素材を使用し、一番ご自身にグッとくる包丁を選んでいきましょう。
青紙スーパーはさらに少し特徴がありますので続けて解説いたします。
青紙スーパーとは?使用するメリット・デメリット
青紙スーパー(Aogami Super)とは、日立金属が製造している刃物用の高級鋼材の一種です。

「青紙」と呼ばれる鋼材シリーズの中でも特に合金成分(タングステンやクロム、バナジウムなど)が多く含まれており、以下のような特徴があります。
○ 硬度が高い
○ 切れ味が持続しやすい
○ 鋭い刃先を得やすい
主に包丁や大工道具などの、切れ味や耐久性が求められる刃物に使われることが多い鋼材です。
青紙スーパーのメリット
他の安来鋼系よりも硬度が高いため、研ぎの頻度を減らすことが可能で、切れ味も長持ちします。
プロの料理人や刃物マニアにも好まれる、信頼性の高い鋼材であり、初心者が使うには少しハードルが高いと言えるでしょう。
デメリット
とにかく価格が高いという点がまず挙げられるでしょう。高性能なだけに高級包丁として扱われることが多いです。
また、研ぎが難しい点も挙げられます。一般的な青紙鋼より硬いので、研ぎは多少の慣れや技術が必要ですが、頻度としては少なめで問題ありません。
また、完全にサビないわけではなく、ステンレス鋼と違い、水分拭き取りは必須となります。
「白紙と青紙 どっち?」選び方のポイント
切れ味を最優先する方、予算が少ない方などであれば白紙、長持ちさせたいのなら青紙でしょうね。
入り口は白紙で良いと筆者は思います。
白紙は研ぎなどメンテナンス頻度が少し高くなりますが、白紙で一通り経験した後に価格が高い青紙のありがたみに触れた方が良いと考えます。筆者も白紙からでした。

長持ちさせるためのメンテナンス!サビを防ぐコツ
○ 使用後にすぐに水気を拭き取る・・・鋼材は水分が大敵。切った後、そのまま放置せずサッと拭くだけでもサビを大きく防げます。
○ 使用後はしっかり乾燥・・・洗った後はキッチンペーパーやタオルで完全に拭く。空気がよく通る場所に保管しましょう。
○ 錆止め油を塗るのも効果的・・・こまめに食用油や専用オイルを塗ると、表面の酸化を防ぎやすい。
○ 研ぎを楽しむ・・・研ぎ石を使うと刃先が蘇り、切れ味もアップ。青紙スーパーは硬めなので、慣れるまで専門家に依頼してもOK。
まとめ:青紙鋼を知ると包丁選びがもっと面白くなる
青紙鋼(あおがみこう)の魅力は、何と言っても「シャープな切れ味と、ほどよいサビへの耐性のバランスの良さ」。そして、その上位モデルである青紙スーパーは、プロや愛好家を虜にする高い性能を誇ります。
一方で、白紙鋼には研ぎ心地と切れ味の鋭さに特化した魅力があり、「どっちを選んでもワクワクする」のが安来鋼の面白いところ。
もしサビが気になるならステンレス系の包丁に流れてしまいがちですが、鋼の包丁だからこそ味わえる切れ味の深みや愛着は、一度ハマると抜け出せない楽しさがあります。
「ちょっとだけ手間はかかるけれど、きっと料理がもっと楽しくなる」。そんな包丁を探している方は、ぜひ青紙鋼の世界をのぞいてみてください。
蛇足ですが、ステンレス包丁はラクだし便利です。
でも、鋼(はがね)の包丁を手入れしながら使い続けると、いつの間にか愛着が湧き、「今日もいい仕事をしてくれたな」と感謝の気持ちで拭き上げている自分に気づくはずです。

道具と対話しながら料理をする時間は、きっとあなたの日常を少しだけ豊かにしてくれるはずです。ぜひ、青紙鋼や青紙スーパーの世界に足を踏み入れてみてください。料理のステージがひとつ上がる感覚を、きっと味わえるでしょう。
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