青紙スーパー鋼のデメリットとは?おすすめの包丁や研ぎ方を解説!

青紙スーパー鋼のデメリットとは?おすすめの包丁や研ぎ方を解説!

青紙スーパー(青紙スーパー鋼)は、高級炭素鋼の一種で、日立金属が製造する「青紙鋼」の上位グレードです。炭素とタングステン、クロム、モリブデン、バナジウムを含み、青紙一号よりも耐摩耗性や靭性に優れています。

本日は青紙スーパー鋼の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説し、プロ向けの研ぎ方についても詳細に説明します。

また、プロ仕様のハイエンド包丁として、三徳包丁・柳刃包丁・出刃包丁のおすすめをそれぞれ1本ずつ紹介しますので最後までご覧いただければと思います。

目次

青紙スーパー鋼とは?

青紙スーパー鋼(Aogami Super)は、日立金属が製造する刃物用炭素鋼で、「安来鋼(やすきはがね)」と呼ばれる伝統的鋼材の中でも最高級グレードに位置付けられます​

成分的には白紙鋼(しろがみこう、純度の高い炭素鋼)をベースに炭素含有量を約1.4~1.5%まで高め、さらにタングステン(W)やクロム(Cr)、バナジウム(V)などの合金元素を追加して特殊製錬したものです​。

安来鋼(白紙鋼、青紙鋼、黄紙鋼)の特性

クロムの添加により粘り強さ(靱性)が向上し、タングステンやバナジウムによって刃先に硬質な炭化物が形成されるため耐摩耗性が飛躍的に高くなっています​。

その結果、青紙スーパー鋼は熱処理後にHRC62~65前後という非常に高い硬度を実現でき​、包丁に用いると極めて鋭い刃先と長く持続する切れ味を発揮します​。

包丁の硬材のHRC

一般的な青紙2号・青紙1号との違い

青紙スーパー鋼は、同じ青紙系の鋼材である青紙1号・2号と比べても炭素量・合金元素量がさらに多く、“スーパー”の名にふさわしい性能を持ちます。

青紙1号の炭素含有量は約1.25~1.35%、青紙2号は約1.05~1.15%ですが、青紙スーパー鋼はそれらを上回る炭素1.40~1.50%を含有し​、タングステン・クロムも増量、さらにバナジウムまで添加されています。

この違いにより硬度・刃持ち(切れ味の持続性)は青紙系の中で最も優秀ですが、その反面、研ぎにくさや製造難易度も増しています​。

炭素鋼の「切れ味」「持続性」「研ぎやすさ」からみた総合的な評価

青紙1号・2号も高炭素鋼ゆえに鋭い切れ味と持続性で定評がありますが、青紙スーパーはそれを凌駕する刃物鋼の“最高峰”と言えます​。

刃物としての適性

青紙スーパー鋼はその高硬度により、包丁にすると非常に鋭利な刃が付けられ、かつ摩耗しにくく長切れするのが最大の特徴です​。

実際、プロの調理現場でも、切る量が多い食材(大量の野菜の下ごしらえや刺身の引き切りなど)において、青紙スーパー鋼の包丁は研ぎ直し頻度を減らせるため重宝されています​。

ただし硬度が上がった分靱性(ねばり)は低下しており、刃先を薄く研ぎすませると欠けが発生しやすい点には注意が必要です​。

実際、青紙スーパー鋼の刃物は薄刃の片刃包丁には不向きとされ、薄い刃先では調理中に欠けてしまう恐れが高いため敬遠されます​。

一方で牛刀や三徳包丁などの両刃包丁であれば刃厚に余裕があり、青紙スーパー鋼のメリットを活かしつつ欠けのリスクを抑えられるため、プロ用の高級包丁に採用されることが多いです​。

青紙スーパー鋼のメリット

極めて高い硬度による鋭い切れ味と持続性

青紙スーパー鋼は現行の刃物用鋼材の中でもトップクラスの硬度を誇り​、その硬い刃先は初期の切れ味が非常に鋭く、かつ長時間鈍らないことが利点です​。

炭素量の多さと添加合金元素による硬質炭化物のおかげで、プロが連日使用しても研ぎ味が長持ちします。

優れた耐摩耗性による長期間の使用

タングステンなどの効果で刃先の耐摩耗性が極めて高く、長時間の使用でも刃こぼれや磨耗による切れ味低下が起こりにくいです​。

そのため、一度研ぎ上げた刃を長期間維持できるため、忙しい現場で数日~1週間程度研がずに済むケースもあります(使用状況によります)​。

高級感とプロ仕様の採用実績

青紙スーパー鋼は安来鋼の中でも最高級とされる素材であり​、包丁愛好家や職人の間では特別な存在感があります。

和食料理人

実際に一流職人による手打ち鍛造包丁やオーダーメイドの高級包丁で採用されることが多く、その希少性と性能から価格も高めですが、それゆえに所有欲を満たす高級感があります。

プロの料理人が切れ味を追求して選ぶ鋼材であり、「いつかは青紙スーパーの包丁を使いこなしたい」と憧れる料理人もいるほどです。

青紙スーパー鋼のデメリット

硬度が高いため研ぎが難しい

非常に硬く摩耗しにくい分、切れ味が落ちた際の砥石による研ぎ直しには時間と技術が必要です​。

青紙スーパー鋼は他の鋼材に比べて砥石に当たっても削れにくく、研ぎ減りしにくい反面研ぎにくいというジレンマがあります​。

慣れないと刃先に適切な刃が付かず、研ぎ上げるのに相当の根気が必要です。

衝撃に弱く欠けやすい

硬度の高さゆえに刃先の靱性(粘り強さ)は低めで、特に薄く鋭角に仕上げた刃は衝撃で欠けが発生しやすいです​。

骨に当てたり、まな板に強く当たるような使い方をすると微小な刃こぼれが生じる場合があります。

繊細な刃付けを追求するとそのリスクがさらに高まるため、プロでも青紙スーパー鋼の包丁を扱う際はあえて刃先に微小な二段刃(小刃)を付けて補強することがあります​。

錆びやすいためメンテナンス必須

青紙スーパー鋼はステンレス鋼ではなく高炭素の和鋼(はがね)であるため、湿気や塩分に触れるとすぐ錆が発生します​。

青紙スーパーは錆びやすい

特に炭素量が非常に多いため錆びやすく、放置するとステンレス鋼が生じるようなピンホール状の錆(点錆)が内部に進行することもあります​。

そのため日々の手入れ(使用後の水分除去、油拭き、研ぎ直しなど)を怠れません。メンテナンス性という点では扱いが難しく、錆を嫌う人には向かない鋼材です。

価格が高く一般向けではない

青紙スーパー鋼の包丁は素材コストや製造難易度の高さから価格が高価になる傾向があります。

他の鋼材であれば量産品も多いのですが、青紙スーパーは主に熟練職人による鍛造品や高級ラインに使われるため、数万円~十数万円といったプライスタグが付くことも珍しくありません​。

また、上述のように扱いや研ぎの難しさから万人に勧められる鋼材ではなく、包丁マニアや専門家向けと言えます​。

実際、「青紙スーパーを使いこなせる自信がある」「最高の鋼で研ぎを極めたい」という 玄人好みのロマン が詰まった素材です​。

青紙スーパー鋼包丁の研ぎ方(プロ向け)

青紙スーパー鋼の包丁を研ぎ上げるには、基本に忠実かつ丁寧な研ぎ作業が求められます。

硬度が高いため時間はかかりますが、適切な砥石と手順を踏めば鋭い切れ味を蘇らせることができます。以下にプロ向けの研ぎ方のポイントを解説します。

砥石の選び方(荒砥石・中砥石・仕上げ砥石)

青紙スーパー鋼を研ぐ際は、粒度の異なる複数の砥石を用意しましょう。基本は荒砥石(#200~#400程度)・中砥石(#800~#1500程度)・仕上げ砥石(#3000~#8000程度)の3段階です​。

切れ味が鈍った程度であれば中砥石から開始しても良いですが、刃こぼれや欠けがある場合はまず荒砥石でしっかり研磨して刃先の形を整える必要があります​。

青紙スーパー鋼は非常に硬く平砥石で繊細な刃先を形成するのに時間がかかるため、荒砥でしっかりベースの刃先角度を作ることが重要です​。

具体的には、#220~#400の荒砥石(例:シャプトンの荒砥#320など)で欠け部分を削り落とし、刃先全体に新たなエッジを付けます。

#220~#400の荒砥石

その後、#1000前後の中砥石(キング#1000など標準的な刃付け砥石)で荒砥の傷を消しながら刃先を整えます。

最後に#5000~#8000の仕上げ砥石で刃先を研ぎ上げて鋭さと艶を出します。

青紙スーパー鋼は研ぎ減りしにくい反面、砥石の減りが偏ったり目詰まりしやすい場合もあるので、こまめに砥石の面直し(平面出し)を行いながら研ぐと良いでしょう。

研ぎ角度の適正値と刃先の調整

両刃包丁の場合、刃を砥石にあてる角度は片側およそ15度が目安です​(刃と砥石の間に硬貨2枚程度差し込んだ高さ)。

この角度を保ちながら、刃先全体を均一に研いでいきます。青紙スーパー鋼は硬いため角度が安定しないと刃先がうまく当たらず研げません。利き手で包丁を持ち、反対の手の指先で刃先を砥石に軽く押さえつけるようにして一定の角度をキープしましょう​。

刃先の調整として、青紙スーパー鋼の包丁では研ぎ上げの最後に小刃(マイクロベベル)を付けることがおすすめです。小刃とは刃先のごく先端に僅かな別角度の面を付ける操作で、これにより刃先の強度が増して欠けにくくなります。

実際、市販の青紙スーパー鋼包丁の中には「強靭な小刃」を意図的に付けて仕上げている製品もあります。小刃を付けるには、通常の研ぎ角度よりやや角度を立て(5度程度角度を大きくする)、仕上げ砥石で刃先の先端だけを軽く研磨します。

こうすることで、目に見えない程度の二段刃が形成され、鋭い切れ味はそのままに耐久性が増す効果があります。

欠けてしまった場合の修正方法

万が一刃先が欠けてしまった場合は、荒砥石での修正研ぎから始めます。

欠けの大きさにもよりますが、基本は欠け部分をすべて研ぎ落として刃先ラインを復元する必要があります。青紙スーパー鋼は硬く摩耗に強いため、この荒研ぎ作業には相当な時間と労力がかかることを覚悟してください。

砥石にしっかり水を含ませ、欠けた箇所を中心に包丁を前後に動かして研磨します。ときどき刃先全体をチェックし、欠けが消えるまで根気強く研ぎ続けます。

荒研ぎで形が整ったら、中砥石→仕上げ砥石で通常の刃付け工程に移行し、切れ味を仕上げます。欠けが深い場合や自分で修正するのが難しい場合、メーカーや専門の研ぎ直しサービスに依頼する手もあります。

特に青紙スーパー鋼のような極硬鋼材はプロが工房の電動砥石(ベルトグラインダーなど)で修正したほうが早くて確実なことも多いです​。自分で直す場合は無理をせず、途中で刃先が焼け付かないよう水冷しながら少しずつ研ぐこと、そして根気強く作業することが大切です。

青紙スーパー鋼特有の研ぎ方のコツ

上記のように、小刃の活用や荒砥からの丁寧な段階研ぎが青紙スーパー鋼包丁を研ぐコツですが、他にもいくつかポイントがあります。まず、砥石の種類選びではできれば焼成硬度の高いセラミック砥石やダイヤモンド砥石を用いると効率的です。

軟らかい砥石だと鋼のほうが硬くて研ぎが進まない場合があるため、シャプトンやNANIWAなど硬質な人造砥石が相性良好です。

ナニワ砥石
ナニワ砥石

また、研ぐ前に刃をしっかり脱脂・洗浄しておくことも大事です。表面に油分や汚れがあると砥石の当たりが不均一になり、硬い鋼ゆえに研ぎムラに繋がります。

さらに、研ぎ時間に余裕を持つことも心構えとして重要です。青紙スーパー鋼は「焦って短時間で研ごう」とするとまず思うような刃が付きません。

じっくり砥石に向き合い、時には数十分~1時間かけて研ぎ上げるくらいの気持ちで取り組みましょう。こうした手間はかかりますが、その分研ぎ上がった時の切れ味の復活ぶりは感動ものです。

プロの研師でも「青紙スーパー鋼を研ぎこなすには砥石と研ぎ手を選ぶ」と言われるほどで​、適切な砥石と高度な研ぎ技術が要求されますが、使いこなせればこれほど頼もしい刃物鋼はありません。

おすすめの青紙スーパー鋼包丁(プロ仕様・ハイエンドモデル)

青紙スーパー鋼を使用した包丁は数多くありますが、その中でもプロ向けのハイエンドモデルを「三徳包丁」「柳葉包丁」「出刃包丁」の各種類ごとに1本ずつ紹介します。

いずれも青紙スーパー鋼ならではの切れ味を備えた逸品ですが、それぞれ特徴や価格帯が異なります。

三徳包丁 :堺一文字光秀『一文字 玄 三徳包丁 青紙スーパー 黒打槌目 180mm』

堺一文字光秀『一文字 玄 三徳包丁 青紙スーパー 黒打槌目 180mm』


大阪・堺の老舗「堺一文字光秀」によるプロ向け三徳包丁です。青紙スーパー鋼を芯材に使い、表面は黒打ちの槌目仕上げとなっています。

非常に硬い青紙スーパー鋼で作られた玄人向けの包丁と銘打たれており​、鋭い切れ味はもちろん重厚な和風の外観も魅力です。

野菜・肉・魚とオールマイティに使える三徳型で、刃渡り180mmと家庭でも扱いやすいサイズ。耐錆性向上のため軟鉄との三層鋼構造になっており、刃厚もしっかりあるため欠けにくさも考慮されています。価格は約23,800円(税込)と、青紙スーパー鋼包丁としては手の届きやすい設定です​。

プロの現場で毎日研ぎ上げて使い倒す「実戦用」としておすすめの一本です。

柳刃包丁:堺一文字光秀『煌(きらめき)柳刃包丁 青紙スーパー鋼 鏡面仕上げ 270mm』

堺一文字光秀『煌(きらめき)柳刃包丁 青紙スーパー鋼 鏡面仕上げ 270mm』
堺一文字光秀『煌(きらめき)柳刃包丁 青紙スーパー鋼 鏡面仕上げ 270mm』

​同じく堺一文字光秀が誇る最高級の柳刃包丁です。最高級の炭素鋼「青紙スーパー鋼」を用い、職人技による鏡面研磨仕上げが施された美術品のような一本​。

柄には黒檀(こくたん)と水牛角の両口金を配した八角和柄を採用しており、高級感と握りやすさを両立しています。

刃渡り270mmの長尺刃は主に刺身を引くためのものですが、青紙スーパー鋼ならではの研ぎ澄まされた刃先は魚の身をスッと引ける抜群の切れ味です。

非常に硬い鋼ゆえ、製造元でもその切れ味を活かすため慎重に焼入れ・研磨が行われています。

価格帯は240mmで約93,900円、270mmで約101,700円、300mmで114,500円(税込)と高価ですが​、「さらに上のレベルの包丁を求めるなら青紙スーパー鏡面柳刃を」と公式に謳われるほどの自信作です​。

プロの寿司職人や刺身包丁の愛好家にとって垂涎のモデルであり、その切れ味・存在感ともにまさにハイエンドと言えるでしょう。

出刃包丁:盛高鍛冶刃物『青紙スーパー 出刃包丁 180mm(両刃)』

高知県の伝統鍛冶「盛高鍛冶刃物」(もりたかかじはもの)による青紙スーパー鋼の出刃包丁です。

青紙スーパー鋼を鍛接(割り込み)して鍛造した本格派で、通常は最高級とされる青紙2号をさらに凌ぐ鋼材として自社で最高峰の青紙スーパーを使用して作られています​。

この出刃包丁は珍しい両刃タイプの出刃で、骨の硬い魚(タイなど)や鳥・牛の骨を叩き切るような場面でも使える丈夫さが特徴です​。

刃厚がありズッシリとした造りですが、青紙スーパー鋼の鋭さで骨周りの肉をスパッと切り離す爽快な切れ味を誇ります。柄には朴木(ほお)の和柄を使用し、錆止め策として茎(なかご)にステンレス材を継いでいるため柄の中で錆びる心配も少なく長期間衛生的に使えます​。

価格は180mmで25,850円(税込)前後と、同クラスの出刃包丁(青紙系)と比較しても妥当な範囲に収まっています​。

プロの魚捌き用として信頼できる一本で、「伝統700年の土佐鍛冶」の技術が詰まった青紙スーパー鋼出刃と言えるでしょう。

まとめ

青紙スーパー鋼包丁は、その卓越した性能ゆえに扱い手を選ぶプロ向けの包丁です。

選ぶ際には、メリットである圧倒的な切れ味と刃持ちの良さに魅力を感じる一方で、デメリットである研ぎの難しさや錆びやすさ、価格の高さもしっかり理解しておきましょう。

購入後は適切なメンテナンス(使用後の洗浄・水分除去、定期的な研ぎ直し、防錆処理など)が欠かせません​。

青紙スーパー鋼はプロ仕様の高級鋼材であり、そのポテンシャルを十分に発揮させるには使い手の研ぎ技術と管理が問われます。

しかし、手間ひまかけて付き合う中で研ぎ澄まされた切れ味が長持ちする喜びは格別であり、使いこなすことで包丁使いとしての技量向上にもつながるでしょう。

最高峰の鋼を扱う醍醐味を味わいながら、ぜひ青紙スーパー鋼包丁を末永く相棒として育てていってください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次