先日、包丁の研ぎ方については以下の記事でお伝えしました。

包丁を適切に研ぐためには、用途や仕上がり具合、研ぎの頻度などに合った砥石を選ぶことが大切です。
当記事では、初心者から中・上級者まで、幅広い方におすすめできる代表的な砥石と選び方のポイントをご紹介します。
砥石の番手(粒度)の考え方
砥石は主に「番手(粒度)」と呼ばれる目の粗さによって分類されます。おおまかな目安として、以下のように使い分けます。
荒砥(#80~#400程度)
◯ 刃が欠けているときや、刃の形を大きく修正するときに使用
◯ 一般の家庭用途では頻繁には使いませんが、大きなダメージがある場合に便利
中砥(#800~#2000程度)
◯ 一般的な包丁の研ぎに最もよく使われる
◯ 刃の再生や、やや切れ味が落ちた段階のメンテナンスに最適
仕上砥(#3000~#8000程度)
◯ 刃をより鋭利に仕上げ、切れ味を長持ちさせたいときに使用
◯ 切り口の美しさが重要な和包丁や刺身包丁などにおすすめ
初心者の場合は、まずは中砥(#1000程度)だけでも十分です。慣れてきたら、仕上げ用(#3000~#6000程度)を揃えると、より切れ味と持続性を向上できます。
砥石選びのポイント
砥石選びのポイントをまとめると以下となります。
項目 | 内容・例 |
---|---|
番手の組み合わせ | – 初心者: #1000程度の中砥のみでもOK – 中〜上級者: 中砥(#1000前後) + 仕上砥(#3000〜#6000程度) |
砥石の素材 | – 人工砥石(セラミックなど): 均一な品質・研削力でメンテナンスしやすい – 天然砥石: 高価で扱いが難しいが、独特の研ぎ味を楽しめる |
サイズ | – 横幅や長さが十分にある方が研ぎやすい – 一般的には「180×60mm」程度以上がおすすめ |
付属品・アクセサリー | – 砥石台: 砥石を固定し安定させるために便利 – 面直し用プレート: 砥石の凹凸を定期的に平らに修正 – 研ぎ台や滑り止めマット: 安全性・作業効率アップに有効 |
番手(粒度)と素材、さらにサイズや付属品を総合的に考慮して選ぶと、自分に合った砥石を見つけやすくなります。
初心者におすすめの砥石
今までの観点を踏まえながら初心者におすすめの砥石をお伝えしていきます。
KING(キング)中砥 (#1000)・コンビ砥石

特徴
日本製の老舗ブランドで、価格も比較的手頃。#1000程度の中砥だけでもまずは十分研ぐことができます。コンビ砥石の場合は、#1000と#6000程度がひとつになっているものもあるので、1つで中砥と仕上砥の両方が使えて便利です。
ポイント
キング砥石は吸水性が高いので、使用前にしっかり水につけてから使うのがコツです。
SHAPTON(シャプトン)セラミック砥石

特長
硬めのセラミック砥石で変形しづらく、研磨力が安定しているのが魅力。ガラス砥石(通称「シャプトン・グラスストーン」)シリーズなどは砥石面が平坦に保ちやすい設計になっており、メンテナンスがしやすいです。
ポイント
短時間で研げるというメリットがある反面、価格はやや高め。研ぎ水が少量でも研げるので、手入れも楽です。
SUEHIRO(スエヒロ)・CERAX(セラックス)シリーズ

特長
中砥から仕上砥まで番手のバリエーションが豊富。やや柔らかめの砥石で、研ぎ味がなめらか。初心者でも感覚が掴みやすいと評判です。
ポイント
程よい吸水性があり、しっかりと表面を濡らして使用します。砥石の表面をフラットに保つための面直し(ならし)もしやすいです。
NANIWA(ナニワ)・超セラミック砥石シリーズ

特長
ナニワの「超セラミック砥石(通称 チョーセラ)」や「刃楽(はがく)」シリーズは、プロの料理人にも愛用者が多い高品質砥石。切れ味が持続しやすく、研削力も高いです。
ポイント
こちらも価格はやや高めですが、その分長寿命で、高いコストパフォーマンスを発揮します。
素材毎に適した砥石
包丁には様々な素材が使われています。
そして、使われている素材によって適した砥石が異なってきます。
一般的なステンレス包丁(家庭向け)
モリブデンバナジウム鋼、13クロームステンレスなどで、錆びにくく手入れが楽だが、炭素鋼ほど鋭利にはなりにくいという特c王があります。
おすすめの砥石
中砥(#800~#1000前後)
◯ 普段のメンテナンスはこれ1本でも十分研げる。
◯ 刃が欠けたり、切れ味が極端に落ちた場合は、#400~#600の荒砥を使用して刃先を修正。
仕上砥(#3000~#6000前後)
◯ 鋭い刃先に仕上げたい場合や包丁を長持ちさせたい場合は、仕上砥で磨き上げる。
補足
◯ ステンレス系は研ぎすぎると焼けが発生する場合もあるので、砥石と包丁の摩擦熱を抑えるために適宜水を足すのがポイント。
◯ SHAPTONなどの硬めのセラミック砥石だと、短時間で効率よく研ぎ上げることが可能。
◯ 初心者には、KING中砥(#1000) + 仕上砥(#6000) といったコンビ砥石が手軽で人気。
ハイカーボンステンレス包丁
VG10、銀三などを鋼材として使用した包丁。炭素鋼に近い切れ味とステンレスの錆びにくさを両立させたもの。硬度が高く、鋭い切れ味に仕上げやすい。
おすすめの砥石
中砥(#1000前後)
◯ 基本は一般的なステンレス包丁と同様。VG10などの硬めの素材は、研削力のあるセラミック系砥石が◎。
仕上砥(#3000~#8000前後)
◯ ハイカーボンステンレスは鋭い刃先に仕上げやすいため、#3000〜#6000程度で十分な切れ味を得られる。
◯ より繊細な切れ味を求める場合は、#8000以上の超仕上砥で研ぐことも可能。
補足
◯ ハイカーボンステンレスは硬度が高いため、砥石が柔らかいと減りが早いこともある。硬めのセラミック砥石(SHAPTON・NANIWAチョーセラなど)を選ぶと砥石の面崩れが少なく長持ち。
◯ ただし、硬い砥石でゴシゴシ研ぎすぎると刃が欠けることもあるので、力を入れすぎず適度な圧で研ぐことが大切。

白紙鋼・青紙鋼などの和包丁
白紙1号、白紙2号、青紙1号、青紙2号、スーパー青紙などで作られた包丁。


非常に鋭利な刃先を得られるが、錆びやすい。研ぎやすいものが多く、プロの料理人に愛用される代物となっています。
おすすめの砥石
荒砥(#400~#600)
◯ 刃こぼれや大きな欠けがあった際に修正したり、刃先の形状を大きく変えるときに使用。
中砥(#1000前後)
◯ 日常的なメンテナンス用。炭素鋼は研ぎ感が良いので、比較的柔らかめの砥石でもしっかり刃がつく。
仕上砥(#3000~#8000前後)
◯ 和包丁の切れ味を存分に引き出すために不可欠。仕上砥で整えることで刺身包丁なども抜群の切れ味に。
◯ 天然砥石派もいるが、扱いが難しく高価な場合が多いので、人工砥石の#6000~#8000でも十分高い仕上がりを得られる。
補足
◯ 炭素鋼は水分や酸に弱いので、研ぎ終わったらしっかり水分を拭き取り、乾燥させることが大切。
◯ 研ぎ味を楽しみたい方は、スエヒロやキングなどのやや柔らかめの砥石が好まれる。一方、シャプトンなどの硬めの砥石は研削力が高いため、効率よく仕上げられる。
◯ 天然砥石を使うと独特の刃の繊細さが出せるが、値段が高い・石ごとに個体差が大きい・慣れが必要などの理由で、まずは人工砥石で十分。
セラミック包丁
非常に硬度が高く、錆びない。金属臭が付かないため、衛生面で優れている。一方、欠けやすさがある。
おすすめの砥石
ダイヤモンド砥石や専用のセラミック砥石
◯ セラミック包丁は硬度が金属包丁よりも高いため、一般的な中砥石(アルミナ系、セラミック系)だと研げない・研ぎにくい場合が多い。
◯ 刃先が欠けている場合など、大きな修正をするならダイヤモンド砥石を用意する必要がある。
補足
◯ セラミック包丁は、メーカー(例:京セラ)の「研ぎ直しサービス」などを利用するのもひとつの手。
◯ セラミック包丁用に開発された専用研ぎ器(ロールシャープナーなど)もあるが、仕上がりの鋭さでは砥石に劣ることが多い。
チタン包丁
非常に軽量で錆びにくいが、鋼に比べると刃先硬度は劣る。
おすすめの砥石
◯ 一般的にはセラミック砥石(#1000前後)で十分に研げる。
◯ ただし、切れ味を極限まで高めるのはやや難しいため、過度な仕上砥は不要の場合が多い。
補足
◯ 細かい番手の砥石で仕上げても鋼ほどの切れ味を得るのは難しいので、実用範囲(#1000~#2000程度)でのメンテナンスがメイン。
超硬合金(タングステンなど)・パウダーメタル鋼
非常に硬度が高いが、その分研ぎにくい。
おすすめの砥石
◯ ダイヤモンド砥石を使用するのが無難。一般的なセラミック砥石でも時間がかかったり、砥石が極端に減りやすくなる可能性がある。
補足
◯ プロ仕様の特殊包丁が多く、研ぎに慣れていない場合は専門研ぎサービスに依頼するケースも多い。
素材別の砥石選びまとめ
上記を表にしてまとめると以下となります。
素材 | 特徴 | 推奨砥石 | ポイント |
---|---|---|---|
一般的ステンレス | 錆びにくく日常使い向き | 中砥(#1000)+仕上砥(#3000~#6000) | 吸水性のある砥石ならKING、硬めならSHAPTONなど。水を適宜足して熱を抑える。 |
ハイカーボンステンレス | 炭素鋼に近い切れ味、錆びにくさもある | 中砥(#1000前後)+仕上砥(#3000~#8000) | 硬度高めなので、硬めのセラミック砥石を選ぶと効率が良い。 |
炭素鋼(ハガネ) | 非常に鋭利に仕上がるが錆びやすい | 荒砥(#400~#600)、中砥(#1000前後)、仕上砥(#3000~#8000) | 柔らかめ砥石で研ぎ味を楽しむもよし、硬め砥石で効率的に仕上げるもOK。 |
セラミック包丁 | 極めて硬く錆びないが、欠けやすい | ダイヤモンド砥石、または専用研ぎ器 | 一般的な砥石では研ぎにくい。メーカーの研ぎ直しサービス利用も手。 |
チタン包丁 | 軽量で錆びにくいが、鋼ほどの鋭利さは難しい | セラミック砥石(#1000前後) | 過度な仕上げは不要。実用レベルでの研ぎがメイン。 |
超硬合金・パウダーメタル | 非常に硬度が高く、研ぎにくい | ダイヤモンド砥石 | 研ぎの難易度が高いため、専門サービスに依頼することも多い。 |
まとめ
包丁を長持ちさせるには適切な砥石を選び、正しい研ぎ方を身につけることが大切です。
砥石には天然・人工や粒度の違いがあり、水浸や角度の管理が研ぎの精度を左右します。
自分の保有する包丁の素材や、自分の練度に合わせて適切な砥石を選んでいきましょう。
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