筋引き包丁(すじひき包丁、英語では「Sujihiki」などとも呼ばれることがあります)は、主に肉の筋や皮を切り離したり、大きな塊肉やローストなどを薄くスライスしたりするのに適した包丁です。

本日は筋引き包丁の特徴をお伝えした上で、おすすめの筋引き包丁についてランキング形式でお伝えしていきたいと思います。
筋引き包丁の特徴
筋引き包丁は、肉や大きめの魚を美しくスライスするのに適した包丁で、和・洋問わず幅広い料理現場で活躍します。
もし大きな塊肉を扱う機会が多い場合や、スライスを美しく行いたい場合に1本あると大変便利な包丁です。筋引き包丁の特徴を表にまとめると以下となります。
項目 | 内容 |
---|---|
形状・刃渡り | 刃は細長く幅が狭い。一般的な刃渡りは240mm~300mmほど |
主な用途 | – 肉の筋取りや塊肉のスライス – 大きな魚(柵など)のスライス – 筋や皮を剥ぐ作業 |
刃のタイプ | 両刃が主流(左右対称)で、左利き・右利き共に使いやすい |
特徴・利点 | – 細長い刃が食材との接触面積を減らし、引き切りがスムーズ – 肉を美しい断面でスライスできる |
サイズの選び方 | – 家庭では取り回ししやすい240mm程度がおすすめ – プロなどではより長いもの(270mm~300mm)も使用 |
柳刃包丁との違い | – 柳刃包丁は主に刺身用で片刃が多い – 筋引き包丁は両刃が基本で、肉や幅広い食材のスライスに向いている |
こんなときにおすすめ | – 大きな塊肉をまとめてカットしたい – すじや皮をきれいに剥いで見た目を整えたい – 薄切りを美しく仕上げたい |
注意点 | – 刃が長いぶん取り回しには慣れが必要 – サイズによっては収納場所に注意 |
筋引き包丁が活躍する代表的な肉料理
筋引き包丁(Sujihiki)は、先ほどお伝えした通り主に肉を扱う際に切れ味と美しい仕上がりを両立させるための包丁です。特に以下のような肉料理で重宝します。
1.ローストビーフの切り分け
大きな塊肉を調理した後、薄切りでサーブするときに活躍します。長い刃を使って一気に引き切ることで、断面が美しく仕上がります。
2.ローストポークやローストチキンのスライス
ローストビーフ以外でも、塊で調理した肉(豚肉・鶏肉など)を切るときに、薄く均一に仕上げやすいです。
3.ステーキのカット・筋切り
厚めの牛肉をステーキ用にカットする際や、スジの多い部位の筋を取り除く作業がしやすいです。筋をしっかりと剥いでおくことで、食感を良くできます。
4.ハムや生ハムのスライス
長い刃渡りで大きなハムや生ハムをスライスすると、断面が崩れにくく見た目もきれいになります。
5.その他の大きな塊肉・ブロック肉
チャーシュー用の豚肩ロースブロックなど、ブロック肉の調理後のスライスにも重宝します。鮮度の高い肉や脂の多い部位でも、長い刃によりスムーズにカットできるのがメリットです。
筋引き包丁は万能包丁なのか?
結論から言うと、筋引き包丁は“万能包丁”というよりも、肉や大きな魚のスライス作業に特化した包丁です。三徳包丁のように「肉・魚・野菜」を幅広くまんべんなくカバーするのではなく、特に「肉の筋を引く」「薄くスライスする」「断面を美しく仕上げる」といった用途に強みがあります。


そのため、一本でさまざまな食材を手軽に調理したい場合は三徳包丁が便利で、美しい仕上がりが求められる肉や刺身などを専門的に扱う機会が多い場合は筋引き包丁が適しています。状況に応じて使い分けるとよいでしょう。
参考までに三徳包丁と筋引き包丁の違いを表にまとめたものが以下となります。
項目 | 筋引き包丁 | 三徳包丁 |
---|---|---|
主な形状 | ・細長く、刃幅が狭い ・長い刃渡り(240〜300mm程度) | ・刃幅が広め ・刃渡りは165〜180mm程度が一般的 |
用途 | ・肉の塊をスライス ・肉の筋・皮を剥ぐ ・大きな魚の柵取り | ・肉・魚・野菜など幅広い食材への対応 ・日本の家庭で最も一般的 |
刃のタイプ | ・両刃が主流 ・引き切りが中心 | ・両刃が主流 ・押し切り・引き切りどちらにも対応 |
メリット | ・細長い刃により、スライス時の食材との接触面が少ない ・肉の断面が美しく仕上がる | ・一本で多くの食材に対応できる ・取り回しやすく扱いやすい |
デメリット | ・刃が長く、取り回しに慣れが必要 ・専用用途向けのため汎用性は低め | ・一般的なサイズのため、大型の塊肉や大きな魚のスライスには不向きな場合がある |
こんなときにおすすめ | ・大きな塊肉を薄切りにする ・ロースト肉の切り分け ・魚を綺麗にスライス | ・日常的な家庭料理 ・野菜のカットや肉・魚の下ごしらえなど幅広く使える |
収納・管理 | ・長さがあるため、包丁スタンド・ケースを選ぶ際に注意 | ・一般的な大きさのため収納しやすい |
筋引き包丁の選び方
料理人が筋引き包丁を選ぶ際の主なポイントを表形式でまとめました。
項目 | 内容 | ポイント・注意点 |
---|---|---|
刃渡り | 多くは 240mm〜300mm 程度の長さ | – 刃渡りが長いほど、大きな塊肉を一度に引き切りしやすい – 長すぎると扱いづらくなるため、自分の手の大きさや腕のリーチに合わせる |
刃の素材 | ステンレス系・炭素鋼(鋼)系など | – ステンレス系:錆びにくく日々の手入れが比較的容易 – 鋼系:切れ味に優れ研ぎやすいが錆びやすい – 用途やメンテナンスの習慣を考慮して選ぶ |
刃の厚み 形状 | 細長く幅が狭めでやや薄い刃が一般的 | – 食材との摩擦が少なく、引き切りがスムーズ – 厚みが薄いほど切れ味が繊細になるが、耐久性には注意 |
柄 | 木柄、合成樹脂、ステンレス柄など | – プロ仕様では長時間使用でも疲れにくく、滑りにくい素材を選ぶ – 木柄の場合は見た目が良いが水濡れや衛生管理に注意 |
重さ バランス | 柄とのバランスが取りやすいかを確認 | – 刀身が長い分前重心になりがち – 自分のカットスタイルに合わせて、適度な重心・重量を選ぶ |
手入れ | 錆びの発生、刃こぼれへの対処、研ぎやすさなど | – ステンレス系は錆びにくく手入れが簡単 – 鋼系はこまめな手入れが必要だが、研ぎ直しで鋭い切れ味を維持しやすい |
価格帯 | 数千円〜数万円以上まで幅広い | – 初心者や家庭用ならコスパ重視のモデルも選択肢 – プロ仕様でブランド・鍛造・材質にこだわるほど価格は上がる |
- サイズ・長さ:扱いやすさとのバランスを考え、自分の腕や調理スペースに合った長さを選ぶ。
- 素材:ステンレス系か鋼系かで、錆びやすさと研ぎやすさが異なる。手入れの頻度や求める切れ味に合わせて選択。
- 握りやすさ・バランス:実際に握ってみて重さや重心をチェックし、自分のカットスタイルに合ったものを選ぶ。
- メンテナンス:使用後の洗浄・乾燥、定期的な砥ぎのしやすさを確認しておく。
- 価格・ブランド:初心者はコスパ重視、プロやこだわり派は材質・職人技・ブランド力を踏まえて選ぶと良い。
プロ用におすすめの筋引き包丁ランキング
それではプロ用におすすめの筋引き包丁をお伝えしていきます。
第1位:實光刃物 【フレア】筋引


切れ味 | ★★★★★ |
持続性 | ★★★★★ |
メンテナンスのしやすさ | ★★★★☆ |
見た目の美しさ | ★★★☆☆ |
価格 | 65,450円(税込) 240mm 71,500円(税込) 270mm |
堺の刃物屋の中でも名声が高い實光刃物が販売している【フレア】筋引は高性能な筋引き包丁です。
鋼材となっているSPG STRIXは2024年に實光刃物がリリースした最新版の粉末ハイス鋼です。
今までのどの鋼材よりも硬度は高くHRCは65程度で切れ味や刃持ちは最高峰です。しかも、研ぎやすさまで担保されており価格が高いという点を除いては最強の鋼材となっています。

価格が高くても最高級の筋引き包丁を使用したいという方にとって非常におすすめできる一本となります。
SPG STRIXの鋼材で作られているので気になって購入しました。実際に使ってみると、その切れ味の鋭さに驚かされます。硬度HRC65という高い硬度を持ちながらも、研ぎやすさは炭素鋼に近く、プロの現場でのメンテナンスが非常に楽です。特に、肉のスライスや筋引き作業では刃がスッと食材に入る感覚があり、仕上がりの美しさが格段に上がりました。錆びにくい性質も持ち合わせているため、使い勝手と耐久性を兼ね備えた優れた包丁だと思います。
SPG STRIXの鋼材という点に惹かれて試しに購入してみましたが、期待以上のパフォーマンスでした。この鋼材は金属組織が非常に緻密で、切れ味が長持ちするだけでなく、耐食性や靭性も優れています。研ぎ直しも容易で、手間をかけずに理想的な切れ味を維持できるのは非常にありがたいポイントです。240mmという刃渡りも扱いやすく、肉や魚のスライスが思い通りに仕上がります。見た目も洗練されており、機能美を追求した一本と感じました。
第2位:正広作口金付 筋引き270mm

切れ味 | ★★★★☆ |
持続性 | ★★★☆☆ |
メンテナンスのしやすさ | ★★★☆☆ |
見た目の美しさ | ★★★★☆ |
価格 | 23,100円 270mm |
正広(Masahiro)は、伝統的な刃物産地・関市に根ざした包丁メーカーであり、長年培われた技術と現代的な製造工程によって質の高い包丁を製造しています。
プロの料理人が求める鋭い切れ味と耐久性を兼ね備えている一方で、一般家庭向けの扱いやすいシリーズも充実しているため、幅広いユーザーに支持されています。
鋼材は同社オリジナルの炭素鋼で炭素、バナジウム、タングステンを配合しておりHRCは60と十分な高度を誇っています。そのため相応に高い刃持ちと切れ味を期待できます。
参考までに以下がHRCの比較表です。白紙鋼や青紙鋼と同程度の硬度といえますね。

ハンドルは積層強化木で水や汚れに強く、木製よりも割れ・反りが起きにくいというメリットがある反面、天然木に比べるとやや重い傾向があるのがデメリットです。
鋭い切れ味が持続します。刃渡り270mmの長さは、肉のスライスや筋引き作業に最適で、精密なカットが可能です。また、硬度HRC60の高硬度を持ち、耐久性にも優れています。ハンドルは抗菌剤入りの積層強化木を使用し、衛生面でも安心です。全体のバランスが良く、長時間の作業でも疲れにくい設計となっています。
口金一体型のデザインは、強度と美しさを兼ね備え、プロの現場での信頼性を高めています。また、研ぎ直しが容易で、常に最適な切れ味を維持できます。正広の熟練した職人による手仕上げが施されており、細部まで丁寧に作られています。この筋引包丁は、肉の処理を中心とする和食料理人にとって、欠かせないツールとなるでしょう。
第3位:清輔 VG10 33層鏡面仕上げ ダマスカス筋引き包丁 240mm


切れ味 | ★★★☆☆ |
錆びにくさ | ★★★☆☆ |
メンテナンス性 | ★★★☆☆ |
美しさ | ★★★☆☆ |
価格(225mm) | 11,000円(税込) |
清助刃物は、主に京都に拠点を構え、全国各地の包丁や刃物を取り扱う専門店・ブランドです。日本各地の刀鍛冶や包丁職人の製品を取り揃えており、伝統技術と現代的なデザイン・機能を融合させた多彩なラインナップが特徴です。
今回の筋引き包丁は清助刃物のオリジナル商品です。鋼材はV金10号を使用しています。V金10号は以下をご覧いただければ分かる通り、非常にバランスの良い鋼材です。

ダマスカス仕様となっており見た目が美しいのも魅力的なポイントですね。
ダマスカス模様が美しい鏡面仕上げとなっています。刃渡り240mmの長さは、肉のスライスやフィレ作業に最適で、鋭い切れ味が持続します。また、ステンレス鋼のため錆びにくく、メンテナンスも容易です。ハンドルには黒合板材を採用し、手に馴染む握りやすさと高い耐久性を兼ね備えています。全体のバランスが良く、長時間の作業でも疲れにくい設計となっており、洋食の現場でその性能を存分に発揮します。
まとめ
筋引き包丁は、肉や大きな魚のスライスに特化した包丁で、長い刃渡りと細身の形状が特徴です。そのデザインにより、食材との接触面積が少なく、引き切りがスムーズに行え、美しい断面を得られます。
ただし、刃が長いため取り回しには慣れが必要です。用途に応じて三徳包丁などと使い分けることで、調理の幅が広がります。
自分の手に馴染むサイズや素材を選び、適切なメンテナンスを行うことで、長く愛用できる包丁となるでしょう。
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