「切れ味の良い包丁が欲しいけど、メンテナンスが大変なのはいやだな…」「VG10は高級すぎるし、AUS8よりもう少しレベルアップしたい」というジレンマを抱えたことはありませんか?
実は最近、そんな悩みを解消してくれる鋼材として「AUS10」が注目を集めています。ステンレス鋼の中でも、“高い硬度とサビにくさ、そして手が届きやすい価格帯”を同時に満たしてくれるという評判だからです。

でも「AUS8と何が違うの?」「VG10よりも良いの?」といった疑問が次々に湧いてきますよね。
(一応簡単な表もここで置いておきますが本文で詳しく解説します)

本記事では、AUS10 包丁の基本から、AUS8・VG10・銀紙3号 包丁との比較、さらには硬度(HRC)や注意点まで徹底的に解説します。自分の料理スタイルに合うかどうか、ぜひこの記事を読んで判断してみてください。読了後は、きっと「これだ!」と納得する一本が見つかるはずです。
関連記事:包丁の素材・種類を徹底解説|初心者でもわかる鋼材からステンレス、セラミックまでの選び方
そもそもAUS10とは? ステンレス鋼の中での位置づけ
AUSシリーズとは
AUSシリーズとは、大同特殊鋼が手がける“ステンレス鋼”です。
大同特殊鋼は1916年に創業された老舗の大手特殊鋼メーカーであり、ほかにも自動車部品や工作機械、航空宇宙分野など幅広い業界に製品を提供しています。2023年度の売り上げも連結で5800億円を超える一大グループで、日本国内だけでなく海外にも拠点や販売網を持ち、世界規模で特殊鋼を提供しています。

シリーズには、AUS6、AUS8、AUS10などがあり、数字が大きいほど炭素量が多く、より硬度・切れ味の高さが期待できます。
AUS10の特徴としては以下です。
- 切れ味:高炭素+適度な合金元素でシャープな刃を作りやすい
- サビにくさ:ステンレス成分もしっかり含まれ、錆を気にしすぎずに使える
- コスト:VG10(日本の「武生特殊鋼材」が開発・製造するステンレス鋼の一種)ほど高価ではなく、コストパフォーマンスが良い
「切れ味と扱いやすさの両立」は可能なのか?
鋼包丁のような切れ味を求めたいが、サビやすさは避けたい…そんなニーズに応えやすいのがAUS10となります。
「ちょっとだけ上級者向けステンレス鋼」と捉えるとイメージしやすいでしょう。
AUS8と何が違う? 切れ味と価格の比較表
まずは「AUS8」との違いをざっくり比較してみましょう。AUS8はAUS10の“弟分”ともいえる存在です。先ほども述べましたが、大前提として、AUSシリーズは数字が大きいほど炭素量が多く、より硬度・切れ味の高さが期待できます。
項目 | AUS8 | AUS10 |
---|---|---|
硬度(HRC目安) | 57前後 (メーカー処理により変動) | 58~60程度 (高めの処理で60台超も) |
切れ味持続 | 中~やや高 | 高 (より長持ちしやすい) |
サビ耐性 | 高 (ステンレス鋼として十分) | 同程度かやや高 (製造元の処理による) |
価格帯 | 手頃~中価格帯 | 中価格~やや高価格 |
おすすめな人 | 安定した性能&コスト重視、初心者~中級者向け | 切れ味の鋭さ・刃持ちを重視、やや上級者向け |
個人の好みによりますが、AUS8はコストを抑えつつ、そこそこ良い切れ味がほしい方向きです。
AUS10に関しては、もう少し切れ味を追求&メンテナンスにも手を抜かず楽しみたい方向きであり、まだ包丁を使い始めたばかりの方はまずはAUS8で良いと思われます。
VG10・AUS8 vs AUS10:3種類をまとめて比較
「AUS10ってVG10ほどじゃないんでしょ?」とイメージされる方もいるかもしれません。そこで、「VG10・AUS8・AUS10」をいっぺんに表で比べてみましょう。
項目 | VG10 | AUS10 | AUS8 |
---|---|---|---|
製造元 | 武生特殊鋼材製(Takefu Special Steel) | 大同特殊鋼(AUSシリーズ) | 大同特殊鋼(AUSシリーズ) |
硬度(HRC) | 59~62程度 (高め) | 58~60程度 (中~高) | 56~58程度 (中程度) |
切れ味 | 非常にシャープ | シャープかつバランス良し | 良いがやや控えめ |
価格帯 | 高級ラインが多い | 中価格~やや高価格 | 手頃~中価格 |
サビ耐性 | 高 (ステンレス系トップレベル) | 高 (十分家庭用に耐える) | 高 (初心者でも扱いやすい) |
特徴/印象 | “とにかく切れ味最重視”な人向け | “性能×コスパ”両立派に嬉しい | “コスパ最重視&初心者も安心” |
AUS10 包丁の硬度(HRC)と使用するメリット・デメリット
まずはAUS10を使用するメリットのまとめ表です。
項目 | メリット (○) | デメリット (×) |
---|---|---|
切れ味・刃持ち | 一度研げば長く持続しやすく、炭素鋼に近い鋭い切れ味を楽しめる | VG10ほど高硬度ではないため、最高級の切れ味と比べるとやや物足りない場合も |
サビにくさ | ステンレス含有量が多く、錆びにくいので使い勝手が良い | 放置すれば錆びるリスクはゼロではなく、ステンレスといえど最低限のメンテナンスは必要 |
価格帯 | VG10よりリーズナブルな製品が多く、選択肢が豊富 | AUS8よりは高価なので、最安ラインを狙う方にはやや不向き |
研ぎやすさ | 炭素鋼ほど極端に研ぐのが難しいわけではなく、慣れれば扱いやすい | HRCがやや高く、初心者には「砥石での研ぎ作業が難しい」と感じられることも |
扱いやすさ・耐久性 | 日常使いなら「少し水気を拭き忘れた」程度では大きな問題にならない | 高硬度ゆえに強い衝撃などで刃先が欠けるリスクがあり、丁寧な取り扱いが求められる |
総合判断 | 「錆びにくさ」と「切れ味」のバランスを重視しつつ、VG10より安価に手に入る | “ハイエンド”を求めるならVG10、または最安価格を目指すならAUS8を検討したほうが満足度が高い可能性も |
HRC(硬度)は一般的に58~60程度で、メーカーや熱処理によって±1~2ほど変動します。この硬度帯だと、切れ味を長めに保ちつつ、研ぎやすさもある程度維持できる、まさに“絶妙なバランス”といえます。
AUS10は58〜60に位置するため、いわゆる「一般的な硬度」に属しますが、VG10は59〜62と、さらに高めに設定されることが多いのがわかります。
AUS10は、ほど良い刃持ちに加えて錆びにくい点が魅力です。一度しっかり研げば、しばらく切れ味を保てますし、多少水気を拭き取り忘れても大きな問題にはならないでしょう。
また、価格も比較的手頃で、よく比較対象に挙がるVG10より安価な製品が多いので、選択肢が豊富なのも利点です。
デメリットとしては、AUS8より価格が高いことが挙げられますが、それはあくまでAUS8と比べての話です。「できるだけ安くしたい」という人には向きませんが、長く使うつもりがあるなら、最初からAUS10を選ぶのも十分アリだと思います。

ただし、AUS10はHRCがやや高いぶん、研ぎには少し慣れが必要になります。初心者の方には、「砥石で研ぎづらい」と感じるかもしれません。
さらに、価格相応といいますか、VG10と比べればやや切れ味は劣ります。もし最初からハイエンドを目指すのであれば、VG10を選ぶ方が満足度が高いでしょう。
銀紙3号 包丁との違い:和鋼vsステンレス鋼の視点も含めて
銀紙3号とは?
銀紙3号とは、「銀紙鋼」の一種で、日本の安来鋼シリーズ(例:白紙鋼、青紙鋼、銀紙鋼)のうち、ステンレス性を持たせたタイプを言います。
和包丁にもよく使われ、高級ラインのステンレス和鋼として人気を博しています。
AUS10 vs 銀紙3号 包丁
AUS10と銀紙3号の包丁ではどちらを選ぶべきなのでしょうか?
AUS10 | 銀紙3号 | |
---|---|---|
製造元 | 大同特殊鋼 | 日立金属 安来鋼 |
特徴 | 海外ブランド包丁や量産ラインなど、幅広い製品に使われることが多い | 「和包丁らしさ」を重視した仕上げが多く、職人や専門店での扱いがやや多め |
価格帯 | 中~やや高価格帯まで選択肢が広い | 高価格帯になりがち |
基本的に、「和」の特徴を活かした銀紙3号か、量産品のAUS10か、という選択になるので、より芸術を求める人は銀紙3号を手に取るのが基本になってくると思われます。
まとめ
AUS10 包丁は、「ステンレス鋼の扱いやすさ」と「ある程度の切れ味・刃持ち」を程良く両立し、しかも「VG10ほど高価ではない」というポジションで、多くの料理好きから支持を集めています。
- AUS8よりもう一段上の切れ味を手にしたい
- でもVG10ほどの予算をかけられない、あるいはメンテの難しさは避けたい
そんな方にこそ、AUS10 包丁はおすすめ。「自分の料理の腕が上がったかも?」と錯覚するような気持ち良さを味わえるかもしれません。せっかく手に入れた一本を大事に研ぎながら使い続けると、料理がもっと楽しく、美味しくなること間違いなしです。
総合的にメリット・デメリットを把握した上で、納得のいく判断をしていきましょう。
(AUS10シリーズを使用するメリット・デメリット簡易表)
項目 | メリット (○) | デメリット (×) |
---|---|---|
切れ味・刃持ち | 一度研げば長く持続しやすく、炭素鋼に近い鋭い切れ味を楽しめる | VG10ほど高硬度ではないため、最高級の切れ味と比べるとやや物足りない場合も |
サビにくさ | ステンレス含有量が多く、錆びにくいので使い勝手が良い | 放置すれば錆びるリスクはゼロではなく、ステンレスといえど最低限のメンテナンスは必要 |
価格帯 | VG10よりリーズナブルな製品が多く、選択肢が豊富 | AUS8よりは高価なので、最安ラインを狙う方にはやや不向き |
研ぎやすさ | 炭素鋼ほど極端に研ぐのが難しいわけではなく、慣れれば扱いやすい | HRCがやや高く、初心者には「砥石での研ぎ作業が難しい」と感じられることも |
扱いやすさ・耐久性 | 日常使いなら「少し水気を拭き忘れた」程度では大きな問題にならない | 高硬度ゆえに強い衝撃などで刃先が欠けるリスクがあり、丁寧な取り扱いが求められる |
総合判断 | 「錆びにくさ」と「切れ味」のバランスを重視しつつ、VG10より安価に手に入る | “ハイエンド”を求めるならVG10、または最安価格を目指すならAUS8を検討したほうが満足度が高い可能性も |
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