パン切り包丁はパンを切る際に便利なよう刃先が波刃(ギザギザ)状になっている包丁です。
硬めのクラストや柔らかい生地を押しつぶさずに切れるよう設計されており、パンくずの飛び散りや切り口の乱れを最小限に抑えられます。一般的に刃渡りはやや長く、バゲットのような大きなパンでも一気に切り分けられます。
また、刃先が切り離すというより“裂く”ように作用するため、ハード系からソフト系のパンまで対応可能です。
さらに、スポンジケーキやロールケーキのような柔らかい生地を均一にカットする場合にも重宝されます。パンを快適にスライスするための専用包丁として、多くの家庭やプロの現場でも活躍しています。

今回はプロ用のパン切り包丁の選び方についてお伝えしていきたいと思います。
プロ用のパン切り包丁の選び方とは?
まずはプロがパン切り包丁を選ぶ際に重要になるポイントをお伝えしていきます。
以下の表は、プロ用のパン切り包丁を選ぶ際に注目したい主なポイントをまとめたものです。
説明 | チェックポイント | |
---|---|---|
刃渡り | 20~30cm程度の長さを選ぶと、バゲットや食パンなど幅広いパンに対応可能。短いと大きなパンのカットが一度で済まない場合もある。 | – 使用するパンのサイズ – 作業スペースとのバランス – 女性や手の小さい方は無理のない長さを選ぶ |
刃の形状 | 波刃(ギザギザ)部分の形状によって、切れ味や食材へのダメージが変わる。小さめの波刃は柔らかいパンに適し、大きめの波刃は硬いクラストのパンに向く。 | – 切る機会が多いパンの種類 – バケットやカンパーニュなど硬めのパンが多いか、食パンやロールパンなど柔らかいパンが多いか |
刃材質 | ステンレス鋼が主流だが、錆に強い高級ステンレス鋼(モリブデン鋼、VG10など)やカーボンスチール(炭素鋼)を使用したものも。カーボンスチールは研ぎやすいが錆に注意。 | – メンテナンスのしやすさ – 耐久性・切れ味の持続性 – 研ぎ直しなどのアフターケアのしやすさ |
持ち手 | 天然木・積層強化木・樹脂など素材はさまざま。握りやすさは使い勝手に直結するため、実際に持ってフィット感を確かめることが重要。 | – 滑りにくさ・グリップ感 – 水や油分を多く扱う現場なら抗菌性・耐水性もチェック – 長時間使用しても疲れにくい形状 |
重量バランス | 刃先側に重心があると、硬いパンのクラストを切りやすい場合があるが、操作性や切り続ける際の疲労度にも影響。自身の手首の強さや握力との相性が重要。 | – 作業スタイル(連続作業か断続的作業か) – 包丁全体の重量および重心位置 – 実際に空振りして感触を確認 |
メンテナンス性 | 切れ味が落ちると研ぎ直しが必要だが、波刃の再研磨は一般的な包丁研ぎより難易度が高い。メーカーに研ぎ直しを依頼できるか確認すると安心。 | – 波刃の再研磨対応の有無 – 防錆性能 – 使用後の手入れ方法(洗浄・乾拭き) |
価格帯 | 長期的に使うなら耐久性と切れ味を重視して、多少高価でもプロ仕様の包丁を選んだほうが結果的にコストダウンに繋がる場合が多い。 | – 予算と必要耐久性のバランス – 使用頻度に合わせたコスト感 – 信頼できるブランドやメーカーの評価 |
パン毎に適した刃渡り
刃渡に関して更に掘り下げます。以下は代表的なパンと、そのパンを切るのにおすすめの刃渡りの目安をまとめました。
パンの種類 | 推奨刃渡りの目安 | 理由・ポイント |
---|---|---|
バゲット カンパーニュなどハード系 | 25cm~30cm | ・クラスト(表皮)が硬く、サイズも大きいため、長めの包丁で一気に“引き切り”しやすい ・刃渡りが長いと安定感があり、スムーズにカット可能 |
食パン サンドイッチ用(角型パン) | 20cm~25cm | ・ホームベーカリーで焼いた食パン1斤サイズにも対応しやすい長さ ・幅広いスライスの厚さ調整がしやすく、取り回しやすい |
フランスパン(小型) バタールなど | 20cm~25cm | ・バゲットよりやや小さめのフランスパンやバタールなら、25cm程度あれば十分切りやすい ・長すぎると持ち運びや収納が不便になることも |
ロールパン ベーグル クロワッサン | 15cm~20cm | ・小さめのパンは、短めの刃でこまめに動かしやすい方が扱いやすい ・ベーグルのようにかためでも、刃全体を大きく使う必要はない |
スポンジケーキ ロールケーキなど | 20cm~25cm | ・柔らかい生地に対して、長めの波刃で優しく“引き切る”と崩れにくい ・生地が大きい場合は25cm以上があると一気にカットしやすい |
普段よく取り扱いパンに応じて適切な刃渡を選択していきましょう。
鋼材の特徴
次に鋼材も重要になってきます。他の包丁で取り扱われるプロ用の鋼材としては、主に炭素鋼とハイエンドのステンレス鋼があります。

炭素鋼は青紙鋼や白紙鋼が選択肢となってきます。白紙鋼は鉄と炭素が構成成分であり、するどい切れ味が特徴となっています。一方、青紙はクロムやタングステンなどを組み入れた合金で、耐摩耗性を強くして耐久性を高くする一方、若干研ぎにくくなるというデメリットがあります。
それぞれの特徴を評価したものが以下となります。

バランスがよくプロに愛用されているのは白紙2号や青紙2号になります。切れ味を重視したい方は青紙スーパーを選ぶ方もいらっしゃいますが、研ぎにくいのでメンテナンス性は損なわれます。
パン切り包丁に主に使われるステンレスは錆びにくいという特徴があります。その代わり切れ味の点で劣り研ぎにくいという欠点があるのが一般的です。
ただ、最近は粉末ハイス鋼のように炭素鋼に負けない切れ味を誇るものがでてきたり、銀紙3号のようにある程度研ぎやすいバランスのよい鋼材も出てきています。

ただ、パン切り包丁の場合は魚をさばいたり、肉の骨を断つことにくらべて硬度は必要ありません。プロ用では「長時間の連続使用に耐えること」「幅広いパンを素早く均一にカットできること」が重要になってきます。
上記のポイントをふまえ、自分の作業環境や使い方に合ったパン切り包丁を選ぶと、効率よく作業を進められ、仕上がりの品質も向上します。
プロにおすすめのパン切り包丁ランキング
それでは本題のプロにおすすめできるパン切り包丁についてランキング形式でお伝えしていきたいと思います。
第1位:旬Sora ブレッド 225mm


切れ味 | ★★★☆☆ |
錆びにくさ | ★★★★☆ |
メンテナンス性 | ★★★☆☆ |
美しさ | ★★★★★ |
価格(225mm) | 15,400円(税込) |
旬Soraは関孫六で有名な貝印グループが提供しているラインです。
なじみの良いプラスチックハンドルの軽量感と鏡面仕上げの刃体が特徴で、くずれやすいパンでも綺麗に切ることができます。
鋼材はハイカーボンステンレス鋼を使っているとしており、具体的にどの鋼材かは明記されていません。ただ、おそらく粉末ハイス鋼に近い鋼材なのではないかと想定されます。

また、機能性だけでなく刃の模様が美しく芸術性を兼ね備えている点も魅力的なポイントですね。
信頼できるパン切り包丁です。高品質なステンレス刃物鋼を使用し、鋭い波刃が特徴で、ハード系からソフト系まで多様なパンをスムーズにカットできます。特に、クラストの硬いバゲットでも、パンを潰さず美しい断面を実現します。また、握りやすいハンドルデザインは長時間の作業でも疲れにくく、毎日のパン作りに最適です。
洋食シェフにとって、このブレッドナイフは多用途に活躍します。鋭い波刃により、サンドイッチ用の薄切りから厚めのトーストまで、均一なスライスが可能です。さらに、ケーキやデザートのカットにも適しており、料理の仕上がりを一層引き立てます。耐久性の高いステンレス素材と人間工学に基づいたハンドル設計は、プロの厨房での厳しい使用環境にも耐え、長期間にわたり信頼できるパートナーとなるでしょう。
第2位:曜YO-U ブレッド 200mm


切れ味 | ★★★☆☆ |
錆びにくさ | ★★★☆☆ |
メンテナンス性 | ★★★☆☆ |
美しさ | ★★★☆☆ |
価格(225mm) | 11,000円(税込) |
曜YO-U ブレッドはYAXELLによって提供されているパン切り包丁です。
YAXELL(ヤクセル)は、日本の岐阜県関市に本社を構える、歴史ある包丁メーカーです。関市は日本有数の刃物の産地として知られ、刀剣の伝統技術を受け継いできた地域です。
ヤクセルは、1932年に創業され、約90年にわたって高品質な包丁を製造しています。
ゆるやかに波うつ刃「うねり刃」(登録意匠)でパンに吸い込まれるような切れ味を実現しています。やわらかいパンをつぶすことなく切れて、硬いパンを切ってもパン屑が殆ど出ません。
ナイフの鋼材にはバランスのよい鋼材であるV金10号が使用されています。

パンを切る上においては十分な切れ味を発揮することが期待できます。
ヤクセルの「曜YO-U パン切り包丁」は、パン職人にとって信頼できるツールです。切れ味は控えめですが、十分に機能を果たします。硬いクラストのバゲットから柔らかい食パンまで、程よくスムーズにカットでき、パンを潰さない点は評価できます。また、ステンレス製の刃は錆びにくく、日々のメンテナンスが楽です。軽量で握りやすいハンドルデザインも、長時間の使用をサポートします。総じて、手頃な価格でコストパフォーマンスに優れた選択肢です。
洋食シェフにとって、この包丁は汎用性の高い道具です。切れ味は目立つほどではありませんが、サンドイッチやケーキのカットにも対応でき、料理の仕上がりを損ないません。刃渡り23cmのサイズは、大きめのパンやロールケーキを切るのに最適で、厨房での操作性も良好です。錆びにくい素材と衛生的な設計は、忙しいプロの現場でも安心して使えます。日常使いに適した堅実な一本と言えるでしょう。
第3位:堺一文字光秀 Gライン パン切り包丁 波刃

切れ味 | ★★★☆☆ |
錆びにくさ | ★★★☆☆ |
メンテナンス性 | ★★★★☆ |
美しさ | ★★★☆☆ |
価格 | 14,500円(税込) 360mmの場合 11,300円(税込) 300mmの場合 |
堺一文字光秀は、大阪府堺市に拠点を構える包丁ブランドです。古くからの伝統技術を受け継ぎ、一丁ずつ丁寧に手仕事で仕上げられます。和包丁だけでなくパン切り包丁なども幅広く提供しています。
堺一文字光秀のGラインは切れ味と刃持ちに優れたシリーズで、鋼材にはステンレス鋼のVG1を使用しています。以下はステンレス鋼の中のVG1の位置付けですが、銀3鋼とならんでバランスのよいステンレス鋼の位置付けとなっています。

刃渡は300mmと360mmと比較的長いのでバゲットなどの大きめのパンが対象になってくるかと思います。
堺一文字光秀のGラインパン切包丁(波刃)は、パン職人にとって理想的なツールです。高硬度のV金1号ステンレス鋼を使用しており、優れた切れ味と刃持ちの良さが特徴です。これにより、バゲットやカンパーニュなどのハード系パンもスムーズにカットでき、断面が美しく仕上がります。また、全鋼製法による一体型の刃は、パンくずの付着を最小限に抑え、衛生的でお手入れも簡単です。長時間の作業でも疲れにくいバランスの良い設計で、毎日のパン作りに欠かせない一本です。
洋食シェフにとって、このパン切包丁は多用途に活躍します。波刃のデザインは、柔らかい食パンから硬いクラストのパンまで、さまざまな種類のパンを潰さずに均一な厚さでスライスできます。さらに、サンドイッチやケーキのカットにも適しており、料理の仕上がりを一層引き立てます。錆びにくいステンレス素材と衛生的な圧縮合板柄の組み合わせは、プロの厨房での厳しい使用環境にも耐え、長期間にわたり信頼できるパートナーとなるでしょう。
第4位:實光刃物 【スタンダード ツバ無】 パン切り 樹脂


切れ味 | ★☆☆☆☆ |
錆びにくさ | ★★★★☆ |
メンテナンス性 | ★★★☆☆ |
美しさ | ★★★☆☆ |
価格 | 6,490円(税込) 250mmの場合 13,420円(税込) 300mmの場合 15,070円(税込) 360mmの場合 |
實光刃物は100年以上にわたり包丁や和包丁を中心に製造してきた老舗ブランドです。
堺の刃物づくりの歴史は600年以上とされ實光刃物もその中で培われた鍛造技術や研磨技術を受け継いでいます。
基本的には實光刃物は炭素鋼や高級ステンレス鋼を取り扱っていますが、パン切り包丁に関しては切れ味より価格を重視したためか鋼材としてモリブデン鋼を使用しています。

硬いフランスパンなどを除けば、十分な切れ味を発揮します。モリブデン鋼は錆びにくいのが特徴なのでメンテナンスをする手間を省きたい方にとっては嬉しい鋼材となっています。
パン職人にとって実用的な選択肢です。切れ味は平均的で、特筆すべき鋭さはありませんが、日常のパン切り作業には十分対応できます。特に、柔らかいパンを潰さずにカットできる点は評価できます。また、錆びにくいモリブデン鋼を使用しており、衛生面でも安心です。手頃な価格設定も魅力で、コストパフォーマンスに優れた一本と言えるでしょう。
切れ味は突出していませんが、サンドイッチ用の薄切りから厚めのトーストまで、均一なスライスが可能です。刃渡り250mmのサイズは、さまざまなパンのサイズに対応でき、厨房での取り回しにも適しています。また、手入れがしやすい樹脂製ハンドルと錆びにくいモリブデン鋼の組み合わせは、忙しい調理現場での使い勝手を向上させます。総じて、日常使いに適した包丁としておすすめできます。
第5位:SUNCRAFT KITCHEN 「せせらぎ」


←250mm 140mm→
切れ味 | ★☆☆☆☆ |
錆びにくさ | ★★★★☆ |
メンテナンス性 | ★★★☆☆ |
美しさ | ★★☆☆☆ |
価格 | 5,500円(税込) 250mmの場合 3,300円(税込) 140mmの場合 |
SUNCRAFT KITCHEN(サンクラフト)は、日本の刃物の町、岐阜県関市に拠点を置く、キッチンツールや包丁を製造するメーカーです。
1960年の創業以来、長年にわたり高品質な製品を提供してきました。サンクラフトは包丁に限らず、さまざまなキッチンツールを展開しているのが特徴で、国内外で人気があります。
「せせらぎ」の構造は以下のように大波と小波に分かれます

硬いパンは大波の刃が食い込んで滑らず切ることができて、柔らかいパンは小波の刃でつぶさず切ることができます。
「せせらぎ」の鋼材はステンレススチールと書いてますが、価格からすると恐らくモリブデン鋼の可能性が高いと推察されます。
切れ味は平均的で、特筆すべき鋭さはありませんが、日常のパン切り作業には十分対応できます。特に、柔らかいパンを潰さずにカットできる点は評価できます。また、錆びにくいステンレス製の刃と握りやすい木製ハンドルの組み合わせは、長時間の作業でも疲れにくく、衛生的でお手入れも簡単です。コストパフォーマンスに優れた一本と言えるでしょう。
洋食シェフの視点から見ると、このパン切り包丁は多用途に活躍します。切れ味は突出していませんが、サンドイッチ用の薄切りから厚めのトーストまで、均一なスライスが可能です。刃渡り約21cmのサイズは、さまざまなパンのサイズに対応でき、厨房での取り回しにも適しています。また、手入れがしやすいステンレス製の刃と木製ハンドルの組み合わせは、忙しい調理現場での使い勝手を向上させます。総じて、日常使いに適した包丁としておすすめできます。
第6位:Zwilling 「ツインフィン2 パンナイフ200mm 日本製」


切れ味 | ★★★☆☆ |
錆びにくさ | ★☆☆☆☆ |
メンテナンス性 | ★★★☆☆ |
美しさ | ★★☆☆☆ |
価格 | 8,584円(税込) 刃渡200mm |
Zwilling(ツヴィリング)は、1731年創業のドイツ・ゾーリンゲン発祥の老舗刃物ブランドです。独自の鍛造や焼き入れ技術を用い、高い切れ味と耐久性を兼ね備えた包丁を多数展開しています。
ステンレスからハイカーボン鋼まで幅広い素材を扱い、デザイン面も洗練されているのが特長です。プロのシェフはもちろん、一般家庭でも使いやすく、世界中で支持されています。
鋼材は高炭素ステンレス鋼で切れ味はステンレス鋼の中では高い部類に位置します。一方、ステンレスの強みである錆びにくさも兼ね備えています。
包丁の刃から柄の部分まで同じ鋼材で一体となっており、衛生的で尚且つ食洗機でも使用可能な点が魅力的なポイントです。
洋食シェフの視点から見ると、このパンナイフは多用途に活躍します。切れ味は突出していませんが、サンドイッチ用の薄切りから厚めのトーストまで、均一なスライスが可能です。刃渡り20cmのサイズは、さまざまなパンのサイズに対応でき、厨房での取り回しにも適しています。また、手入れがしやすいオールステンレスの一体型デザインは、忙しい調理現場での使い勝手を向上させます。総じて、日常使いに適した包丁としておすすめできます。
まとめ
パン切り包丁はパンを切ることに特化した両刃の洋包丁です。
魚や肉をきるような包丁にい比べて硬度は求められておらず、程よい硬度で断面を綺麗に切ることができるかというポイントが重要になってきます。
普段、扱うパンに応じて自身にあった適切なパン切り包丁を選んでいきましょう。
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