和包丁は使用用途にそって様々な種類があります。
特に魚に関する包丁は多いです。今回、取り上げるのは刺身を引くための刺身包丁(柳刃包丁)です。
刺身包丁はまるで刀みたいな形をしており、日本刀のような美しさを備えた包丁として人気があります。

今回は、刺身包丁の選び方のポイントをお伝えした上で、おすすめの刺身包丁をランキング形式でお伝えしていきたいと思います。
刺身包丁(柳刃包丁)を選ぶ際のポイント
刺身包丁を選ぶ際のポイントについて初心者とプロの場合にわけてお伝えします。
初心者が選ぶ際に重要なポイント
初心者が刺身包丁を選ぶ際のポイントを纏めると以下となります。鋼材については表の後に説明します。
ポイント | 具体例 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
鋼材 | – ステンレス鋼・ステンレス系複合鋼 – 割り込み包丁: 芯材が炭素鋼のため切れ味に優れつつ、外側がステンレスなので錆びにくさやお手入れのしやすさも高い – 炭素鋼(白紙・青紙など) | – ステンレスは錆びにくくメンテナンスが容易 – 炭素鋼は切れ味に優れる | – 炭素鋼は錆びやすく、こまめな拭き取りと研ぎが必要 -割り込み包丁も芯材が炭素鋼の場合は、刃先部分には錆対策が必要 – 研ぎの知識やコツを身につける必要あり |
刃渡り | – 用途による(後述) | – 長すぎず短すぎないので家庭用のまな板にも収まりやすい | – 刃渡りが長いほど扱いが難しい部分もあり、初心者は最初はやや短め(240mm程度)でも良い |
価格帯 | – 1万円〜2万円程度 | – ある程度の品質が担保され、切れ味・耐久性も期待できる | – 安すぎると切れ味や耐久性が不十分な場合もある |
柄 | – 和包丁の柄(八角柄、丸柄など) | – 手に合った形状・材質を選ぶと疲れにくく扱いやすい | – 実際に握ってみないとフィット感が分かりにくい |
重量 | – 軽量〜中程度 | – 初心者ほど軽めのほうが扱いやすく、疲れにくい | – 極端に軽すぎると安定感に欠ける可能性があり、ある程度の重量感も作業の安定性に影響する |
研ぎ | – 月1回程度を目安に砥石で研ぐ | – 切れ味を保つことで、身を潰さずに美しい刺身に仕上げられる | – 包丁の素材や使用頻度に合わせた研ぎ方の知識や練習が必要 – 特に単刃(片刃)は研ぎが難しい場合がある |
使用用途に応じた刃渡りは以下となります。各自の使用用途に応じて刃渡りを考えて選びましょう。
刃渡り | 適した用途・特徴 | メリット・注意点 |
---|---|---|
210mm 前後 | – 小型の魚、刺身用に軽く切り分ける – 家庭用の調理スペースが狭い場合に便利 | – 取り回しがしやすく初心者にも扱いやすい – 大きな魚を一度に引き切るには短め |
240mm 前後 | – 中型魚(アジ・イサキ・鯛の半身など)の刺身 – 家庭での一般的な刺身作りに最も人気の長さ | – そこそこ扱いやすく、幅広い用途に対応 – やや大きめの魚や本格的な引き切りも可能 |
270mm 前後 | – 中~大きめの魚の刺身(ハマチ・サーモンなど) – プロや慣れた家庭料理人にも使用者が多い | – しっかりとした引き切りがしやすく、見栄えよくカットできる – キッチンスペースがある程度必要 |
300mm 前後 | – 大型の魚(ブリ・カンパチ・マグロのサクなど)の刺身 – 寿司屋や和食店などプロ仕様が多い | – 一回の引きで長い距離を切れるため、 身崩れを起こしにくく刺身の切り口が美しい – 家庭用ではやや持て余す場合あり |
330mm 前後 | – 大型魚・マグロやブリの大きなサクを切り分ける – 高級和食店など、本格的な現場で用いられる | – さらに一度でスッと長い切りができ、綺麗な断面を得られる – 扱いに慣れが必要、作業スペースも十分でないと危険 |
360mm 前後 | – マグロ解体ショーや本格的な大きいサク処理など、特殊な場面 – 料亭や寿司店の職人レベルで使用 | – 小型の魚も難なく切れるが、極めて長いので日常のキッチンには不向き – 熟練者向けで価格も高め |
鋼材には大きくわけて炭素鋼とステンレス鋼があります。

炭素鋼は切れ味が鋭い反面、錆びやすく頻繁にメンテナンスが必要になります。
ステンレスは錆びにくい一方で、切れ味が若干劣る傾向にありますが中には高い切れ味を誇るものがあります。ステンレスであれば、ある程度の切れ味を担保できる銀紙3号やV金10号などが候補になってきます。
また、炭素鋼の切れ味を担保しながら錆びを目立たなくしたい方は割り込み包丁や三枚合わせ包丁という選択肢も魅力的になってきます。

プロが選ぶ際に重要なポイント
プロが選ぶ際に重要なポイントは以下となります。
断面を美しくする必要があるので切れ味が重要になってきます。初心者に比べて大きな魚にも対応するために刃渡は長く重くなる傾向にあります。
また、使用頻度も多いことから日々のメンテナンスが重要になってきます。
ポイント | 具体例 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
鋼材(素材) | – 炭素鋼(白紙・青紙など) – 本焼き – 割り込み・銀三鋼など | – 炭素鋼や本焼きは研ぎ上がりの鋭さが格別 – ステンレス割り込み系は錆びにくさと高い切れ味を両立 | – 炭素鋼は錆びやすくこまめなお手入れが必須 – 本焼きは高価で研ぎの難易度が高い – 忙しい現場ではメンテナンス性と切れ味のバランスを取る必要がある |
刃渡り | – 270mm〜300mm以上 | – 刃渡りが長いと大きな魚や分厚い柵でも引き切りやすく、作業スピードが上がる | – 長すぎると取り回しに注意が必要 – 店舗の調理台やまな板の大きさを考慮しないと扱いづらい |
価格帯 | – 3万円〜10万円以上(名工・ブランド品など) | – 高品質の鋼材や職人の技術が反映されており、切れ味・耐久性が高い – 長く使うことを前提に、プロとして投資する価値がある | – 高価な分、盗難・破損リスクに注意 – 包丁の選び方や研ぎに慣れていないと、せっかくの性能を十分に引き出せない |
柄(ハンドル) | – 八角柄や丸柄などの和包丁柄 – 特注品やブランドオリジナルの柄 | – 手に合った形状や太さを選べば、長時間の作業でも疲労を軽減 – 高級材や個性的な柄で所有感・モチベーションが上がる | – 実際に握ってみないとフィット感が分かりにくい – 湿気の多い環境や水仕事が多い場合、木柄はカビや劣化のリスクがある |
重量 | – 中重量〜やや重め | – プロの現場では一定の重量があった方が安定し、スムーズに身を引き切れる | – 重すぎる包丁は手首や肘に負担がかかる – 長時間の作業で疲れやすい場合もある |
メンテナンス | – 毎日の水分拭き取り – 砥石やコンディショナーによる刃先の手入れ | – 常に刃を良好な状態に保つことで、刺身の質・スピード・安全性が向上 | – 炭素鋼や本焼きは使い終わったらすぐに洗って拭く必要がある – 忙しい現場でもメンテナンス時間を確保できないと切れ味が落ちる |
研ぎ | – 専用の砥石(荒砥・中砥・仕上げ砥) – 研ぎに合わせた角度(片刃なら片刃用の研ぎ) | – 研ぎによって切れ味を最適化し、魚の身を潰さずに美しい断面が作れる – プロならではの繊細な切り口を追求できる | – 砥石の使い方や正確な研ぎ角度をマスターする必要がある – 忙しい現場では、研ぐタイミングを確保できないと切れ味を保ちにくい |
産地・ブランド | – 堺打刃物(大阪) – 関の刃物(岐阜) – 三条(新潟) – 高知(土佐)など | – 産地や職人の特徴によって刃の厚みや仕上げ、切れ味の傾向が異なる – 名工ブランドは所有感や料理人としてのモチベーションにもつながる | – ブランド品は高価になりやすい – 産地による違いを理解しないまま購入すると、自分のスタイルに合わない可能性がある |
鋼材は個々人の趣向によって異なります。
以下の表を参考にして鋼材を選んでいきましょう。

錆びやすいが研ぎやすい炭素鋼であれば「青紙鋼」「白紙鋼」、SG2やSRS15のような研ぎにくいが錆びにくい粉末ハイス鋼が選択肢となってきます。
ZDP189HAP40などは最高硬度ではありますが、自前で研ぐのが難しくプロであっても難しい素材となってきています。

また、同じ素材でも作りによって大きな差が出てきます。切れ味を重視するため刃物の名産地である岐阜県の関市や、大阪の堺市などのブランドを使うとよいでしょう。
初心者におすすめの刺身包丁(柳葉包丁)
それでは初心者むけにおすすめの刺身包丁をお伝えしていきます。
プロ用のランキングは次の項目でお伝えしますので、プロの方はクリックしてジャンプしてください。
橋本幹造 両刃包丁 刺身


第1位は関孫六で有名なKAIストアが提供する「橋本幹造 両刃包丁 刺身」です。
基本的に和包丁は片刃ですが、「橋本幹造 両刃包丁 刺身」は両刃で仕上げています。そのため、初心者でも扱いやすい刺身包丁となっています。
刃材はハイカーボンステンレス鋼です。
ハイカーボンステンレス刃物鋼は、炭素含有量が比較的高め(0.8~1.0%程度)のステンレス鋼です。
ステンレス系なので錆びにくく、かつ炭素含有量がある程度高いので硬度・刃持ちもそこそこ期待できるバランスのよさが特徴です。
炭素鋼や粉末ハイス鋼、銀3鋼、VG10などより切れ味は劣りますが家庭で使う場合には十分な切れ味を発揮します。また、炭素鋼より圧倒的に錆びにくく、完全なステンレス包丁より研ぎやすいというメンテナンス性の高さというバランスの良さも初心者向きといえるでしょう。
価格の手軽さも魅力的なポイントですね。
まず、シンプルで洗練されたデザインに惹かれました。キッチンツールにもスタイリッシュさを求めたくなるのですが見た目がすっきりしていて、どんなキッチンインテリアにも馴染みます。持ち手がしっかりとした形状で滑りにくく、握り心地がとても良いのもポイントです。
握りやすい柄とシンプルデザインでお手入れも苦になりません。初心者の私でもプロのような切り口を手軽に再現でき、家での刺身づくりがぐんと楽しくなりました。家族や友人を招くときにも重宝し、見栄えを格段にアップしてくれます。
KEEMAKE 刺身包丁 柳刃包丁 295mm VG10


切れ味 ★★★★☆ | VG10という高硬度の刃材を丁寧に本刃付けしているため、刃先の鋭さは折り紙付きです。片刃ならではの鋭角な刃角度により、刺身を「引き切り」した際の刃の食い込みが非常に良く、スッと引くだけで美しい断面が得られます。ステンレス系包丁にありがちな切れ味の鈍さは感じられず、むしろステンレスとは一味違った切れ味との評価もあるほどです。 |
刃持ち ★★★★☆ | VG10は炭素含有量が高くタングステンなどの合金元素も含むため、磨耗に強く刃先の持続性に優れています。硬度HRC60前後の硬い刃は変形しにくく、適切に使用すれば切れ味が長時間維持されます。 |
錆びにくさ ★★★★★ | 芯のVG10および側材ともにステンレス鋼で構成されており、刃全体が錆への耐性を持っています。使用後に水洗いして放置しても、炭素鋼のようにすぐ錆が浮くことはありません(もちろん長時間濡れたままは厳禁ですが)。 |
メンテナンス ★★☆☆☆ | びに強いため日常のお手入れは洗って拭くだけと簡単で、扱いに神経質になる必要がありません。一方、切れ味を維持する研ぎ直しに関しては片刃包丁のため多少コツが要ります。刃裏の庖丁角度(裏スキ)を潰さないよう片側ずつ研ぐ必要がありますが、刃が長く真っ直ぐなので研ぎ自体は安定して行いやすいでしょう。 |
美しさ ★★★☆☆ | 本包丁の刃はシンプルなマット仕上げですが、その落ち着いた光沢がかえって職人の道具らしい風格を感じさせます。 |
価格 | 13,200(税込) |
第2位はKEEMAKEの刺身包丁です。
KEEMAKEは刃物の世界的な一大生産地となっている中国・広東省の陽江(Yangjiang)などで生産を行うことでコストを抑えています。日本式の刃付け・仕上げなどの技術を組み合わせるモデルを多くラインナップしています。
刃材となっているのはVG10であり家庭用では十分すぎる切れ味を持っています。また、ステンレスの中でもさびにくく刃持ちがよいのも大きなメリットです。
また、大量生産していることもあり価格は廉価であり、最初の一本に適している刺身包丁であるということができるでしょう。
KEEMAKEの刺身包丁はステンレスなのに切れ味もよく、錆びにくくお手入れもラクちん。長めの柳刃が魚の身をスッと引いて、切り口がとても美しく仕上がります。握り心地も程よく、家で気軽にプロ級の刺身が作れます。
切れ味が続くのが最高です。VG10素材のおかげで、錆び知らず&メンテナンスも簡単。長い刃で滑らかに刺身を引けるので、見栄えがぐっとアップして料亭気分が楽しめます。
それでは次にプロ用の刺身包丁についてお伝えしていきたいと思います。
プロにおすすめの刺身包丁(柳葉包丁)ランキング
それでは次にプロにおすすめの刺身包丁をランキング形式でお伝えしていきたいと思います。一応順位づけしていますが、どれも素晴らしい逸品です。
鋼材を見ながら自分の用途にあっているかを確かめながら選定していただければと思います。

順位はあくまで目安です。取り上げている包丁はどれも一級品ですので、趣向にあった刺身包丁を選んでいただければと思います。
第1位:堺孝行 玄武 300mm





さらにわかりやすくは以下の動画をご覧ください。(1分程度の動画で魅力が伝わります)
堺孝行「玄武」は、刃材に青紙2号鋼を用い、丹念な鏡面仕上げを施した刺身包丁です。

青紙2号は白紙鋼に比べて合金元素を加えた鋼材で、切れ味の鋭さと摩耗耐性を高い次元で両立しているのが特長です。

堺孝行ブランドの熟練職人が複数回の火造りと研磨を繰り返すことで、刃全体がまるで鏡のように光を反射するまで磨き込まれています。プロの職人の手によって青紙2号の潜在能力を最大限に引き出しています。
この鏡面仕上げは美観だけでなく、刃面の抵抗を減らして刺身を引く際の滑らかさを向上させる効果もあり、魚の身を潰さず艶やかな断面を得られる利点につながっています。
青紙2号鋼はHRC61~62程度の硬度を実現しながら、極端に硬すぎる青紙スーパー鋼ほど研ぎづらくはありません。そのため、一度研ぎ上げたときの切れ味が長く続きながら、研ぎの際にも比較的砥石に馴染むため、プロのみならず研ぎの中級者にも扱いやすい素材といえます。

加えて、先丸柳刃(先丸正夫)という丸みを帯びた刀先形状を採用することで、一気に引き切る動作をスムーズに行え、まな板に当たる刃先へのダメージを抑えられる設計になっています。
刃幅が標準的な柳刃よりやや広めに設計されているため、魚のサクをすくい上げる際や、薄造りを盛り付ける動作でも安定感があり、プロの現場で重宝される理由となっています。
柄には黒檀の八角柄と水牛角の口輪を組み合わせ、高級感と握りやすさを両立。木材が重厚な黒檀であるぶん、刃の重量とのバランスが良く、長時間の刺身引きでも手首への負担が軽減されるメリットがあります。
ただし錆に対してはステンレス鋼ほどの耐性はなく、青紙鋼ゆえに使用後の水分や塩分の拭き取りは必須です。鏡面ゆえ汚れや指紋が目立ちやすい難点もあります。
しかし、それをこまめに拭う作業がむしろ包丁との対話になり、所有者に愛着を与えるという声も少なくありません。
伝統工芸の粋を取り入れた製法と現代的な加工が融合したこの玄武は、美観のみならず、実際の切れ味や使い勝手も非常に高い水準に仕上がっており、職人だけでなく刃物愛好家にとっても垂涎の一本と評されています。
私は江戸前寿司の職人として10年以上板場に立っていますが、この「堺孝行 玄武」刺身包丁を初めて手に取ったとき、その研ぎ澄まされた切れ味に心底驚かされました。刺身を引く際、包丁の重みと鋭い刃先が相まってほとんど力を入れずともスッと魚の身に滑り込むようです。例えば、脂の乗ったマグロの柵でも、一刀で引けば刃が抵抗なく通り抜け、断面は鏡のように艶やか。繊維をまったく潰さないのでネタの舌触りが格段に良くなり、お客様にも「今日のマグロは格別だね」と褒めていただけるほどです。先丸の刃先も扱いやすく、まな板上で刃先が突っかかる心配がないためリズミカルに作業できます。カンパチやヒラメの薄造りのような繊細な仕事でも、この包丁なら紙のように薄い切り身が均一に引けますし、刺身包丁特有の引き切りによる美しい切断面に自分でも惚れ惚れします。
和食の現場では刺身を引くだけが仕事ではありませんが、それでもこの玄武の柳刃包丁は私の料理に大きな力を貸してくれています。料亭の板場で季節ごとのお造りを引く際、青二鋼の刃は安定した切れ味で朝から夜まで切り続けても鈍る気配がありません。たとえば宴席で数十人分の刺身を仕込む日でも、中盤まで切れ味が落ちないので途中で砥石を当て直す手間が減り、調理に集中できます。刃渡りが長く幅広なおかげで、昆布締めにした白身魚を厚めにそぎ切りするときも、一気に引けて断面が崩れません。お造り以外にも、鰆の西京焼き用に薄くそぎ切りする下ごしらえや、牛肉のたたきを薄造りにする場面など、素材の美しさを活かす繊細なカットが求められる料理で重宝しています。鏡面の包丁は照明を受けて煌めき、盛り付けの際にちらりと見えるその姿はお客様にも「良い包丁ですね」と話題になることがあるほどです。
第2位:【祇園 白】切付刺身




實光刃物は、大阪府堺市に拠点を置く老舗の包丁メーカー・刃物店です。
京都・祇園の料理人の依頼によって作られた斬新なモデルです。最大の特徴はその純白の美観にあります。柄は真っ白な樹脂製で、刃も霞研ぎによる白銀色の仕上がりとなっており、まるで白い日本刀のような独特の存在感を放ちます。
刃渡りは240mm~330mmまでサイズ展開があり、形状は切っ先が角張った切付型(剣型)の柳刃包丁です。この切付形状の刃先は、刺身を引く動作に使いやすく設計されており、関西で主流の尖った柳刃(正夫)とは一味違う取り回しの良さがあります。
刃材には高品質な白紙2号鋼(白鋼)が使われています。白紙2号は不純物が少ない純度の高い炭素鋼で、非常に鋭い切れ味と研ぎやすさを兼ね備えており、プロの和包丁でも定番とされる鋼材です。
最もプロに愛用されている鋼材です。

實光刃物(製造元)によれば、白紙2号は切れ味と研ぎやすさを両立しているため料理人におすすめの鋼材とされています。
実際、本包丁も抜群の切れ味を発揮しやすく、繊細な刺身の引き切りにおいても抵抗なく刃が入る感覚があります。白鋼は錆びやすいデメリットはありますが、その分プロが求める研ぎ上げたときの刃の食いつきの良さや鋭さが得られるため、毎日手入れをしながら使い込む価値のある素材です。
美しい白を基調としたデザインも大きな魅力です。和包丁では黒や木地色の柄が一般的な中、白い朴木の柄と銀色に光る刃のコントラストはモダンで清潔な印象を与えます。
見た目だけでなく質感も良く、握ったときのバランスも考慮されており、見た目の高級感と実用性を両立しています。ただし、高炭素鋼のため錆止め油の塗布や使用後の水分除去は必須です。
特にこの包丁は鏡面に近い刃なので、錆が生じると美観を損ねかねません。使用後すぐに洗って水気を拭き取り、時折刃全体に油を塗って保管することで、美しい状態と切れ味を長持ちさせることができます。
京料理の板前として、この「祇園 白」の包丁を手にするときは、常に少し特別な気持ちになります。白木のまな板と器、それに白い柄の包丁が揃うと、まるでひとつの風景画のように調和がとれるんです。その中で季節の魚を引く瞬間、凛とした緊張感と同時に、どこか落ち着いた喜びを感じるんですよ。
実際の使い心地は、まさに“食材に吸いつく”という表現がぴったりで、刃を入れるたびに“スッ”と切れ込んでいきます。切付型の鋭い切っ先のおかげで、大根の桂剥きから刺身に添える細工まで、この一本で自在にこなせるのは本当に助かります。お造りを盛り付けるとき、真っ白な柄を握りしめる自分の手元を見ると、「京の料理人としてこれほど相応しい包丁はないんじゃないか」と、自然と身が引き締まる思いがします。
お客様から「このお刺身、どこか特別な感じがするね」と言われることがありますが、実はこの包丁のおかげじゃないかと密かに思っているんです。
最初にこの「祇園 白」の切付柳刃を手に取ったとき、正直その白い柄と霞のような刃文に圧倒されました。まるで能面のような静謐な美しさというか、見るだけで背筋が伸びる感じがしたんです。実際にヒラメを引いてみると、白紙鋼の切れ味が想像以上で、一枚一枚が透き通る薄造りに仕上がりました。
それから、切っ先が鋭い剣型になっているのが想像以上に使いやすくて、ヒラメの皮を引くときも細かな隠し包丁を入れるときも、まるで指先の感覚がそのまま刃先に伝わるようなコントロールができるんです。寿司職人としては、この“切っ先の精密さ”こそが仕上がりを左右するので、本当に頼もしい相棒だと思います。
第3位:堺孝行 紫電

さらにわかりやすくは以下の動画をご覧ください。(1分程度の動画で魅力が伝わります)
堺孝行「紫電」シリーズは、銀紙3号鋼と呼ばれる高級ステンレス鋼を用い、刃全体を職人が磨き上げた美しい鏡面仕上げで仕立てられた刺身包丁です。
銀紙3号鋼は、炭素鋼に負けない鋭い刃付けが可能なうえ、ステンレス特有の防錆性を両立しているのが最大の特徴です。
白紙・青紙のように「紙」の名が付く鋼材は本来、炭素鋼ならではのピュアな切れ味が魅力ですが、銀紙3号はそれをステンレスで実現しようと開発された特殊合金鋼です。

具体的には適度なクロム含有量をもたせることで水分や塩分への耐性を高め、使い込んでも赤錆や腐食を起こしにくい反面、炭素鋼に近い組成比で仕上げられているため砥石での再研磨が容易です。
鍛造包丁に適した粘り強さや硬度を備え、適切に焼入れすればHRC60前後の高硬度を得られることから、プロの現場でも切れ味の持続性とメンテナンスのしやすさを高い次元で両立できると評価されています。

炭素鋼のように神経質な錆管理をせず、しかも鋭い切れ味と長持ちする刃先を享受できる点で、銀紙3号は“最も炭素鋼に近いステンレス鋼”とまで称されるほどです。
さらに紫電シリーズでは、刃全体に丹念な鏡面仕上げが施されています。
これは粗砥から中砥、仕上げ砥石、そしてバフによる最終研磨までを数多くの工程で繰り返し、刃表面の微細な傷をほぼ取り除くことで、光を反射するほど平滑な状態に仕上げる高度な技法です。
鏡面ゆえに見た目の豪華さは言うまでもなく、食材を引く際の抵抗を極限まで削減し、刺身の断面がつややかに仕上がるという機能的メリットも生んでいます。
また錆や汚れが付着しにくく、水分がさっと切れて清潔に保ちやすい点も実用上大きな利点です。
さらに柄には高級木材(例:デザートアイアンウッドやマホガニー)を用い、鏡面に輝く刀身と美しい木目のハンドルを組み合わせることで、芸術品のような佇まいを実現しています。
厳粛な和包丁の風格と、ステンレスならではの扱いやすさが融合した紫電シリーズは、切れ味・耐久性・美観のすべてにこだわる料理人の期待に応えるモデルと言えるでしょう。
紫電のそれぞれの形状の特徴は以下となります。
形状 | 特長 | メリット |
---|---|---|
紫電 正夫 | 一般的な柳刃包丁の形状で、先端が鋭利に尖っている | 引き切りで刺身を一刀で切り離せる。汎用性が高く、白身魚の薄造りなどにも適している |
紫電 剣型柳刃 | 切付(剣型)形状の柳刃。先端を斬り落としたようなシャープなデザイン | 切り終わりの抜けがスムーズ。紙のような極薄切りでも刃先が引っかからず美しく切れる |
紫電 先丸蛸引 | 蛸引包丁をベースに先端を緩やかな丸みで仕上げた形状 | 先丸形状によりまな板から刃を引き外しやすく、刺身の仕上がりが均一。扱いやすく安全性も高い。 |
私は『紫電 剣型柳刃』を愛用していますが、切付型の鋭角な切っ先がものすごく役立っています。例えばフグや鯛の薄造りを大皿に綺麗に並べる時、一番最後の部分で刃先が抵抗なく抜けるおかげで、断面が途切れることなく滑らかな刺身が完成するんです。見た目も刀身が長くシャープで、まるで日本刀のよう。飾り包丁の動作もスムーズで、細かい仕事をしているときには『こんなに刺身包丁に融通が利くものか』と感心します。銀紙3号鋼だから錆びを気にせずに済むのは本当に大きいメリットで、慌ただしい宴会前の仕込みでも刃を濡れ布巾でサッと拭く程度でOKという気軽さがあります。仕上がりの透明感は、プロの私でも惚れ惚れするほど綺麗で、まさに値段に見合うだけの性能と美しさ。裏面の仕上げも丁寧で、砥石に当てたときに『スッ』と鳴る刃鳴りが心地良いですね。まさに伝統的和包丁の良さとステンレスの快適さを融合した道具で、これ一本あれば夜の営業までずっと刺身作業に使い続けても全然苦にならない。お客様の前でも堂々と『これが私の相棒です』と言える包丁です。
紫電の正夫は、伝統的な柳刃形状と近代的なステンレス鋼の切れ味が見事に融合した印象ですね。まず握ったときに感じるのは、ステンレス包丁らしからぬシャープな刃当たりです。実際にマグロやヒラメを引いてみると、包丁が魚の身に吸い付くような感触があり、まったくストレスを感じません。鏡面仕上げの刃が魚の脂を弾いてくれるおかげで、引き終わった後にネタが貼り付かずスッと離れるのが快感ですね。しかもステンレスだから、忙しいランチタイムの合間に濡れたままにしても錆びる心配が少なく、手入れに割く時間を減らせます。朝から晩まで仕込みや営業が続いても、切れ味はほとんど落ちず十分乗り切れるほどの刃持ちがありますし、夜に軽く研ぐだけで翌日の朝には再び完璧な状態に戻せる。
第4位:源泉正 青紙スーパー 本焼 柳刃包丁 270mm


切れ味 ★★★★★ | 刃物用鋼材の中でも最高クラスの硬度を持つ青紙スーパー鋼は、適切に研げば恐ろしいほどの切れ味を発揮します。包丁自体が非常に硬くしっかりしているため、刃先をこれ以上ないほど薄く鋭角に研ぎ上げることができ、魚の身はもちろん、皮目までもスッと引くだけで切り離せます。切れ味は「抜群の切れ味」と称され、まるで空気を切るような感覚と形容されることもあります。 |
刃持ち ★★★★★ | 青紙スーパーは炭素量が非常に高く、タングステンやクロム、バナジウムなど合金元素も豊富に含むため、刃先の耐摩耗性が極めて高い鋼材です。その硬さゆえに「切れ味が永く続く」「包丁が減らない」とまで謳われています。実際、プロの現場で何十匹もの魚を捌いてもなお刃が鈍らず、研ぎ直しの回数を大幅に減らせるほどの刃持ちを示します。極限まで硬く焼き入れされた本焼き構造も相まって、一度研ぎ上げた鋭い刃先が長時間持続します。 |
錆びにくさ ★☆☆☆☆ | 青紙スーパー鋼自体は僅かにクロムを含みますがステンレスほどではなく、さらに本焼き(一枚鋼)で軟鉄の保護もないため、錆びやすさは純炭素鋼と同等かそれ以上です。硬度が高い分、錆が発生すると深刻なダメージになりかねないため、錆対策には最新の注意が必要です。 |
メンテナンス ★★☆☆☆ | 取り扱いは上級者向け。 刃持ちが非常に良いため研ぎ直しの頻度自体は少なくて済みますが、いざ研ぐ際には超硬質の刃を相手にすることになります。砥石も高性能なもの(ダイヤモンド砥石やセラミック砥石など)でないと太刀打ちできず、研ぎの技術も要求されます。本焼のため裏押しや刃毀れ修正も難しく、初心者には扱いが難しいでしょう。 |
美しさ ★★★★★ | 鏡面に磨かれた刀身には美しい景色が映り込み、見る角度によっては刃文が幽かに浮かび上がります。この幻想的とも言える刃の表情は、本焼包丁ならではのものです。さらに黒檀の八角柄と水牛角の口輪が高級感を添え、和包丁として完璧な佇まいを見せます。 |
価格 (270mm) | 170,500円(税込) |
源泉正(いずみまさ)は堺の老舗メーカー・松尾刃物製作所のブランドで、本品は青紙スーパー鋼を用いた本焼(※単一鋼の全鋼包丁)の柳刃包丁です。
刃渡り270mmの本職向けサイズで、刀身は職人の手による鏡面仕上げ。本焼ならではの美しい刃紋(ハモン)が浮かび上がり、伝統的な和包丁の風格を漂わせています。
通常、青紙スーパーのような高硬度鋼は「鏡面仕上げには向かない」というのが業界の常識ですが、源泉正では高度な研磨技術でそれを可能にしています。
青紙スーパーは青紙系鋼材の中でも最上位に位置する鋼で、青紙2号のさらに二段階上を行く、包丁鋼材の中で最高の硬度(HRC67±1)を誇ります。

そのため非常に硬く摩耗しにくく、「刃の減りが少ない」「永切れする」「驚異的な切れ味」といった特徴を実現しています。一本一本が熟練の職人により水焼入れ(水焼き入れ)で丹念に焼き入れ・焼き戻しされ、刃には美しい刃文(はもん)が浮かぶこともあります。

これは日本刀と同じように部分的に硬度差をつけた証で、見た目の美しさとしなやかさを包丁に与えています。表面仕上げも鏡のような鏡面研磨が施され、映り込む景色がはっきり見えるほどの輝きです。
柄には水牛角付きの八角柄を採用し、高級感と握りやすさを両立しています。価格はおよそ17万円と非常に高価ですが、その分“一生モノ”と呼べる逸品です。
「硬い=切れる」という特性から青紙スーパー鋼の人気は非常に高く、他の鋼材では得られないロマンがあるとも評されます。
一方で炭素量が多くステンレス成分を含まないため錆びやすさは大きな欠点で、湿気や塩分に触れるとすぐ錆が発生します。使用後の水分除去や油拭きといった日々の手入れが必須で、研ぎ直しによるメンテナンスも難易度が高い鋼材です。
しかしその困難さを乗り越えるだけの圧倒的な切れ味と刃持ちの良さが得られるため、熟練の料理人から熱い支持を集めています。
実際に手に取ると、驚くほど張り詰めた空気をまとっているかのように感じます。大トロのサクに刃先を入れ、息を詰めて引くと、摩擦をほとんど感じないまま切断面が現れました。包丁がまな板に当たる微かな音すら澄んで聞こえ、刀で水を断つと形容される切れ味に背筋が震えます。握りの一貫一貫に最適な厚みでネタを引けたときの快感は、この包丁ならではです。ただ、一瞬の油断も許さない相手でもあります。硬いネタ台に強く当てれば刃欠けの危険があり、丁寧な砥石掛けと油ならしは欠かせません。
石料理のお造りや氷細工を伴う豪華な盛り合わせを作る際、この包丁は最高のパフォーマンスを発揮します。例えば祝席で桐箱からこの包丁を取り出し、鯉の活き造りを引く場面では、その姿と所作だけで客席が静まり返ります。刀身に浮かぶ刃文はまるで水面に映る月影のようで、一太刀ごとに魚の身に美しい紋様が写り込むかのようです。扱いは非常に緊張を伴いますが、その緊張感こそが料理長としての研ぎ澄まされた感覚を呼び覚ましてくれます。錆との戦い、刃こぼれへの気遣い、研ぎの試練——どれを取っても並の包丁以上に手がかかります。しかし、そうして作られたお造りは格別です。薄造りの河豚を皿に広げたとき、透明な身に包丁の冴えが映えわたり、お客様から思わず感嘆の息が漏れます。
第5位:堺一文字光秀 白鋼 霞研 柳刃包丁


切れ味 ★★★★★ | 白紙二号鋼は「細かい番手の仕上げ砥石で研ぎ上げてもキレイに刃がつく」ほど粒子が細かく純度が高いため、本包丁も鏡面のような刃先が得られます。研ぎ上げられた刃先は驚くほど鋭く、刺身の切り口は滑らかで光沢を帯びます。素材への食いつきが良く、魚の身をスッキリと引き切れるので、お刺身の舌触りが格段に向上します。 |
刃持ち ★★★☆☆ | 白二鋼は非常に鋭い刃を付けられる反面、刃の持続性に関しては同シリーズの青二鋼よりやや短めです。ただし軟鉄を合わせた霞研構造のため刃が折れにくく、摩耗も均一に進むので、切れ味の低下は緩やかです。使っているうちに徐々に刃先の鋭さが落ちてきたら、砥石で軽く研ぎ直せば再び鋭い切れ味が蘇ります。実際、白二鋼は**「研ぎ込むごとに切れ味を増す」性質があるとされ、適度に研ぎを入れながら使うことで常に良好な切れ味を維持できます。 |
錆びにくさ ★☆☆☆☆ | 刃金の白鋼、地金の軟鉄ともに錆びやすい炭素系素材で、防錆処理も施されていないため、水や酸に触れるとすぐに錆が発生します。刺身を引いた後は魚のタンパク質が付着したままにせず、速やかに洗い流して水気を拭き取る必要があります。 |
メンテナンス ★★★★☆ | 「白二鋼は研ぎ進めやすく…刃がつく」と刃物専門店が太鼓判を押すように、研ぎやすさという点で白鋼は非常に優れています。本包丁も例外ではなく、切れ味が落ちても砥石に載せればスッと鋼が削れて鋭い刃先がすぐ戻ります。軟鉄を合わせてあるため刃が当たりやすく、プロでなくとも比較的簡単に研ぎ直し可能です。 |
美しさ ★★★★★ | 華美な装飾はありませんが、霞研ぎによる地金と刃金のコントラストが淡く刃に現れ、職人の手仕事を感じさせる風情があります。使い込むほどに刃には薄い霞がかり、黒ずんだ地金部分との対比が渋い景色を作ります。朴木の白い柄に黒牛角の口輪というシンプルな組み合わせも、日本伝統の美意識を感じさせ、飽きの来ない上品さです。 |
価格 (270mm) | 46,500税込) |
大阪・堺の老舗ブランド「堺一文字光秀」による柳刃包丁です。
刃材には「【祇園 白】切付刺身」と同じく日立安来鋼の白紙2号を使用し、刃身は伝統的な霞研ぎ(霞仕上げ)が施されています。霞研とは硬い鋼(刃金)と柔らかい地金を合わせた包丁を研ぎ上げることで、刃と地金の境目に霞のような白い模様が浮かび上がる仕上げ方です。
この包丁も刃先に白鋼の鋼材、その側面に軟鉄を鍛接した構造で、切れ味と研ぎやすさ、そして美しい刃文が楽しめます。
實光刃物は包丁に名入れができますが堺一文字光秀にはそのサービスがありません。その代わり以下のように鞘がついてくるのは嬉しいポイントですね。

白紙2鋼を使っているので切れ味はとてもシャープで、刺身包丁として魚の身を滑らかに引けることは言うまでもありません。白鋼らしく刃先の食いつきが良いため、薄造りや細かな包丁目を入れる作業でも思い通りの繊細さで仕上げられます。
また研ぎやすいのも大きなメリットです。使ううちに切れ味が落ちても砥石で短時間研げば元通り鋭利になるため、毎日研ぐことを厭わない職人にとっては常に最高の切れ味を維持できる頼もしい相棒になります。
また比較的手頃な価格帯で入手できる点も魅力で、プロの間でも「まずは白二鋼の柳刃から始めよ」と言われるほど入門にも最適な一本です。伝統工法で作られているため和包丁らしい風格があり、朴材の柄に水牛角の口金という飾り気のない佇まいは、使い込むほど手に馴染み愛着が湧くでしょう。
ただ、刃渡りが長く鋭いため、扱いには慣れが必要です。特に片刃特有の反り(刃のゆがみ)や刃先の薄さがあるので、研ぎ方を誤ると切れ味を損ねたり刃欠けを起こす可能性があります。
また錆びやすさは避けられないため、長時間放置すると刃に錆が浮き出てしまいます。使用後の丁寧な手入れ(洗浄・水分除去・油塗布)は必須ですが、これは和包丁全般に言える注意点です。
白鋼は青鋼より粘りがやや劣るため、硬いものに当てると刃こぼれしやすい面もあります。その分こまめな研ぎ直しで刃先を整える運用が求められます。
の寿司屋のまな板場にも一本はあると言っても過言ではないのがこの一文字光秀の柳刃です。私も修業時代から使い続け、今では手になじんだ相棒のような存在です。程よい重さと長さで、ヒラメの昆布締めの薄造りから分厚いハマチの切り付けまで自由自在。研ぎおろしたての白二鋼の刃は木の葉のように薄く、サクっとネタに入る感触が気持ち良いほどです。毎晩、営業後に砥石で丁寧に刃を付け直すのが日課ですが、白鋼は研ぎやすいので疲れませんし、研げば鏡のような刃先が蘇ります。
和食の現場では定番中の定番と言える柳刃ですね。癖がなくオーソドックスな形状なので、刺身を引く以外にも薄刃包丁代わりに野菜の桂剥きをしたり、焼き物を筋引包丁のように引いたりと、応用もききます。何より白鋼特有の鋭い切れ味と研ぎやすさは、忙しい厨房で武器になります。錆びやすさだけは注意が必要ですが、使い終わった後にしっかり手入れをしていれば問題ありません。長く付き合える良い包丁ですよ。
第6位:関孫六 青紙鋼(青紙2号) 柳刃


切れ味 ★★★★☆ | 極めて鋭いが上品な切れ味。 青紙2号は適切に熱処理されれば白紙鋼と遜色ない鋭い刃を付けることができます。本包丁も熟練職人により本刃付けされており、刺身包丁として申し分のない切れ味です。実際「白紙2号の鋭い切れ味を持続させることが可能」とされ、切れ味そのものも白鋼並みに鋭いことが前提となっています。魚の身に吸い付くように刃が入り、引けば抵抗なく滑らかに断ち切ることができます。 |
刃持ち ★★★★☆ | 白紙より優れた長切れ。 まさにこの点で青紙2号は真価を発揮します。白紙鋼の鋭さを長く維持できるので、「1日に長時間作業をする料理人」に最適な包丁と言われています。硬度は約HRC62前後と高く、さらに合金元素が刃先の耐摩耗性を高めているため、連続して大量の刺身を引いても切れ味の劣化が緩やかです。 |
錆びにくさ ★★☆☆☆ | 素鋼としては若干マシとはいえ錆易い。 青紙2号は約0.3%程度のクロムを含みますが、ステンレスではありません。そのため基本的には白紙と同様に錆びやすい包丁です。ただ、青紙鋼は使っていくうちに黒い錆(黒錆)が付きやすく、長年使っても反りや歪みが出にくい粘り強さも持つと言われます。 |
メンテナンス ★★★☆☆ | 錆びやすさはあるものの、青紙2号は硬すぎず研ぎにくい鋼材ではありません。白紙鋼に比べれば多少砥石当たりは重いものの、それでもきちんとした砥石を使えば鋭く研ぎ上げることができます。プロは毎日刃をチェックして必要なら砥石掛けしますが、青紙2号の場合毎日研がなくても切れ味が持つことも多く、その点では日々のメンテナンスは楽になります。 |
美しさ ★★★★★ | 関孫六の柳刃包丁は一見オーソドックスな霞研ぎの和包丁ですが、その作りの丁寧さと細部の美しさが光ります。刃身はしっかりと磨かれ、霞と地の境界も均一で、美しい波紋状の地紋が浮かび上がっています。鏡のようにピカピカではありませんが、上品な光沢があり高級感があります。柄の水牛角の模様も一つ一つ異なり、天然素材ならではの風合いを楽しめます。何より「天下の関孫六」というブランド名が刻まれた銘に重みがあり、伝統と格式を感じさせます。 |
価格 (270mm) | 74,800円(税込) |
貝印の包丁ブランド「関孫六」による柳刃包丁です。刃材には青紙2号鋼(青鋼)を採用しており、伝統的な和包丁の技術と貝印の品質管理が融合した一本となっています。
青紙2号は白紙2号にタングステンや微量のクロムなどの合金元素を加えた鋼材で、白鋼よりも硬度が高く刃持ち(切れ味の持続性)が向上しているのが特徴です。
日立金属の資料によれば、青紙鋼は添加元素により粘り強さ(刃の欠けにくさ)と対磨耗性(永切れ=長切れ)を高めた鋼材で、白鋼の熱処理の難しさを解消しつつ切れ味を長持ちさせていると示されています。

その反面、硬い分だけ研ぎ直しに時間が掛かりやすく、金属組織がやや粗大化するため研ぎ上げた際の刃先の鋭さは白紙より僅かに落ちるとも言われます。要するに、研ぎやすさよりも刃持ちを重視した鋼材で、一度つけた刃が長切れしやすいのが利点です。
この関孫六の柳刃包丁でも、青紙2号のメリットが存分に発揮されています。硬度が高いため一日に大量の刺身を引いても切れ味が鈍りにくく、プロの現場でも数日に一度の研ぎ直しで済む場合があります。
忙しい寿司屋や和食店で、営業中に何度も砥石を使う手間を減らせるのは大きな強みでしょう。ただし炭素鋼である点は白鋼と同様で、錆びやすさには注意が必要です。
青紙鋼だから錆びに強いということはなく、使用後は迅速に水気を拭き取る習慣が欠かせません。刃の構造は軟鉄との霞割込み造り(刃が硬質鋼、側面が軟鉄)なので、刃先の研ぎ自体は比較的スムーズに行えます。
本刃付け(刃の最終仕上げ)は熟練の職人が一丁ずつ手作業で行っており、耐久性と切れ味に徹底的にこだわって丁寧に仕上げています。水牛製の口金を備えた朴木の柄は高級感と耐久性を両立し、プロ仕様として細部まで配慮された作りになっています。
この青紙の柳刃は、一晩中刺身を引き続けても驚くほど刃先が保ってくれます。忙しい寿司屋では営業中に研ぎ直しの時間を取れないので、本当に助かりますね。切れ味も申し分なく、白身魚から脂ののった大トロまで滑らかに引けます。砥石で研ぐ感触は硬めですが、その分一度研げば長く切れるので、営業後にしっかり研いでおけば翌日も安心です。錆びさせないように気を遣う点は他の鋼と同じですが、この切れ味と刃持ちを知ってしまうと手放せません。
宴会用に大量の刺身を仕込むとき、この包丁のありがたみを痛感します。例えば50人分の刺身盛りを作る際、途中で切れ味が落ちて砥石掛け…という手間がほとんど無いんです。もちろん定期的な研ぎは必要ですが、仕事中は切れ味が続いてくれるので作業に集中できます。ただ、やはり研ぎには少し気合いが要りますね。白鋼より硬く感じますから、砥石は粗め→中砥→仕上げと丁寧に段階を踏んで研いでいます。扱いに慣れれば鬼に金棒の一本で、忙しい仕出しの現場でも心強い相棒です。
第7位:左近龍雅 片刃 柳刃

切れ味 ★★★★★ | 粉末ハイス鋼SRS15は微細で均一な構造を持つため、非常に鋭利な刃先を付与できます。右利き用の片刃に成形され最終研磨された刃は、炭素鋼の柳刃にも引けを取らない切れ味です。実際、プロから「信じられないほど切れる」と支持を集めているのはその切味ゆえでしょう。刺身を引いたときの感触はスムーズで、硬めのネタ(例えばコハダの皮目など)でもスパッと切れます。 |
刃持ち ★★★★☆ | この包丁の真骨頂はその刃持ちにあります。SRS15は刃物鋼の中でも極めて耐摩耗性が高く、「プロの圧倒的支持を集める」理由もその持久力にあります。一度研ぎ上げたら、その切れ味が長時間維持され、数多くの魚をさばいても刃先がほとんど摩耗しません。白紙や青紙のように頻繁に研ぎ直す必要がなく、下手をすると一日中研がずに作業できてしまうほどです。 |
錆びにくさ ★★★★★ | ステンレス鋼材による高い防錆性。 SRS15はステンレス系粉末鋼で、約15%前後のクロムを含むため錆に強い特性を持ちます。従って、生の魚や湿気の多い環境で使っても錆の発生リスクが極めて低く、炭素鋼のように神経質になる必要がほぼありません。使用後に普通に洗浄・乾燥させれば問題なく、美しい刃を保てます。 |
メンテナンス ★★☆☆☆ | 毎日のように研ぎに時間を割く必要がなく、研磨による包丁の摩耗も極めて少ないです。ただし、いざ研ぐ段になった場合、硬度が高く合金元素が多い粉末鋼は白紙鋼などに比べて砥石の減りが早く、研削に時間がかかる傾向があります。適切な砥石(ダイヤモンド砥石やセラミック系の砥石)を用い、じっくり研ぐ必要があります。 |
美しさ ★★★★☆ | 左近龍雅の柳刃包丁は、一見すると伝統的な和包丁の趣きを備えています。霞研ぎ風の刃文と地金の模様は落ち着いた輝きを放ち、見るからに高品質です。派手なダマスカス模様などはありませんが、そのシンプルさがかえってプロ仕様の道具らしい渋い美しさにつながっています。樹脂含浸処理された八角柄は濃い茶褐色で木目が美しく浮かび、光沢もあります。 |
価格 (300mm) | 80,041円(税込) |
土佐の刃物ブランド「左近」のプレミアムシリーズである龍雅(りゅうが)の柳刃包丁です。伝統的な和包丁の形状を持ちながら、刃材に最新の粉末高速度鋼(ハイス鋼)を用いた意欲的な一本となっています。
旧来の白鋼・青鋼とは一線を画す近代的な鋼材採用により、「驚くべき切れ味と高い耐食性(錆びにくさ)を実現している」と公式にも謳われています。中心の刃金にはSRS13という粉末冶金法で作られたハイス鋼が使われており、硬度はHRC64前後にも達します。

非常に硬い一方で粉末鋼特有の微細な金属組織を持つため、刃先まで分子レベルで均質で鋭く、薄い刃でも驚くほど滑らかな切れ味を発揮します。実際、魚の身に刃を入れたときの感触は「スッと絹を裂くよう」と形容されるほどで、抵抗感の無さは群を抜いています。
刃身はロール鍛造によって成形されており、中心の高硬度鋼を両側からステンレス鋼(SUS405)で挟んだクラッド構造になっています。
これにより刀身全体の強度と耐錆性が大幅に向上し、刃こぼれしにくい粘りも付与されています。側面がステンレスのため日常的なお手入れは格段に楽で、水気を拭き取る程度で錆の発生をほぼ防げます(刃先の芯材部分は錆びる可能性があるので完全に油断は禁物です)。
また外側がやや柔らかい鋼材なので、硬い芯材を研ぐ際にも周囲のステンレスがクッションのような役割を果たし研ぎやすさを確保しています。
もっとも、高硬度の芯材そのものは非常に磨耗抵抗が高いため、白鋼のように短時間で刃が付くわけではありません。しかし一度刃付けすれば長期間研ぎ直しが不要なほど刃持ちが良いので、「そもそも研ぐ頻度が少なくて済む包丁」と言えるでしょう。
まさにプロのヘビーユースに応える実用本位のハイエンドモデルです。
外見も洗練されており、刃はマットな髪の毛のような細かな筋目仕上げ(ヘアライン仕上げ)で高級感があります。和包丁らしいシンプルさの中にモダンな雰囲気を漂わせ、所有欲を満たしてくれる逸品です。
柄には八角形の握りやすいハンドルが採用されており、高級木材を含浸加工したものや竹を積層したものなど、耐久性と意匠性を兼ね備えた素材が使われています。
水牛角の口金も収められ、細部まで作り込まれた仕上がりです。伝統美と現代的な機能美が融合したその姿は、まさに「実用的な芸術品」と呼ぶにふさわしいでしょう。
まるで日本刀のような切れ味と表現したくなる一本です。マグロのサクを引いても、最後まで力を入れずにスーッと引けてしまう感覚には感動しますね。忙しい夜でも刃がヘタらないので、営業中に切れ味の心配をしたことがほとんどありません。さすがに研ぐときは硬さを実感しますが、そもそも研ぐ頻度が少なくて済むので問題ありません。値段は張りましたが、この包丁のおかげで仕事の精度とスピードが上がり、お客様にも最高の握りを提供できていると感じます。
錆を気にせず使える柳刃包丁がこんなに快適だとは思いませんでした。刺身包丁というと神経質に水気を拭ったり油を引いたりと気を遣うものですが、龍雅はステンレスの庖丁に近い感覚で使えます。それでいて切れ味は伝統的な和包丁以上ですから驚きです。大型の魚を捌いた後の引き切りでも刃がブレず、筋の多い身でも断面が滑らかに仕上がります。ただ、やはり扱いには緊張感がありますね。包丁そのものにミスを許さない凄みがあるといいますか…研ぎ含めて腕前を問われる道具だと思います。その分、使いこなせたときには料理長としてワンランク上の仕事ができると実感しています。
第8位:堺孝行 VG10 33層ダマスカス 切付柳刃包丁 270mm(マホガニー柄)


切れ味 ★★★★☆ | 芯材のVG10は硬度HRC60台前半まで高められており、非常によく切れます。堺孝行の職人が最終刃付けを施しているため、箱出しの状態で紙をスッと断ち切るような鋭利さがあります。両刃なので左右均等に刃が付いており、刺身を引く際も安定したコントロールが可能です。 |
刃持ち ★★★★☆ | VG10はコバルトやバナジウムを含有する高級ステンレス鋼で、適切な熱処理により長切れする刃を実現しています。硬度60以上の刃先は摩耗に強く、刺身数十人分程度の作業ではほとんど切れ味の低下を感じません。ユーザーからも「最高級の切れ味と強靭さを持ち合わせた包丁」と称されており、シャープな切れ味が長く保たれることが示唆されています。 |
錆びにくさ ★★★★★ | 刃身の芯材VG10も側層の33層も、いずれもステンレス製です。そのため、水や酸に非常に強く、使用後に水洗いして放置した程度ではまず錆びません。刃そのものが多層構造ゆえに錆びにくいだけでなく、槌目仕上げの凹凸により水滴が溜まりにくい面もあります。 |
メンテナンス ★★★☆☆ | この包丁は和包丁の形状でありながら両刃のため、砥石での研ぎは三徳包丁などと同じ要領で行えます。片刃包丁特有の裏押し作業や片側だけ研ぐバランス調整が不要なため、専門知識がなくても研ぎ直しが可能です。さらにVG10は硬すぎず粘りもあるため、家庭用の標準的な砥石で問題なく研ぐことができます。錆びに強いので、使用後のお手入れも洗って拭くだけでOK。 |
美しさ ★★★★★ | 33層ものダマスカス模様と槌目加工が織りなす刃面は、光の加減で様々な表情を見せるまさに芸術的な美しさですamazon.co.jpstore.shopping.yahoo.co.jp。細かなヘリンボーン状のダマスカス模様が刃全体に浮かび上がり、その上に施された槌目がきらきらと光を反射します。 |
価格 (270mm) | 42,000円(税込) |
堺孝行は堺を代表する包丁メーカーであり、その中でもこちらの包丁は人気の33層ダマスカスシリーズの一つです。芯材にステンレス系の高級鋼材であるV金10号(VG10)を採用し、その両側を計33層の異種金属で挟み込んだ多層鋼(ダマスカス鋼)包丁です。
刃渡り270mmの切付型柳刃(先端が切っ先風に尖った柳刃)で、両刃仕様になっているのが特徴です。(一般的な柳刃は片刃ですが、本品は左右対称に刃が付いており、左利きの方でも扱いやすくなっています)。
表面には鎚目(ハンマード)仕上げが施され、美しい木目状のダマスカス模様と相まって存在感のある外観です。
柄材にはマホガニーが使われており、木目の風合いと適度な軽さ・手馴染みの良さを備えています。価格帯は4万円前後で、プロユースとして十分な性能を持ちながら華やかな見た目も両立したコストパフォーマンスの高い一本です。
ダマスカス鋼とは、異なる金属を何層にも重ね合わせて鍛接し、独特の波紋状の模様を持たせた鋼材です。硬い芯材を軟らかい金属層で包み込む構造のため、刃の硬さと柔軟さを兼ね備えているのが特徴です。

これにより硬度の高い芯材が生む鋭い切れ味と、外層の靱性がもたらす折れにくさ・曲がりにくさを両立しており、日本刀になぞらえて「硬い鋼を軟鉄が包み込み、折れず曲がらずの強靭性を持つ」とも評されます。
さらに本品のように芯材にVG10ステンレス鋼を使った場合、錆びにくくメンテナンスが容易という利点があります。
VG10はモリブデンやバナジウムを含む高炭素ステンレス鋼で、硬度HRC60前後ながら耐食性・耐久性に優れ、刃物用鋼材としてバランスが良いことで知られています。
実際、ダマスカス包丁の芯材にVG10やAUS10といったステンレス鋼が用いられることで台所で扱いやすい高い防錆性が確保されています。一方、ダマスカス包丁は製造手間がかかるため高価になりやすい点と、研ぎ方によっては表面の模様を擦り減らしてしまう恐れがある点には注意が必要です。
しかし正しく研ぎ管理すれば機能上の問題はなく、美しい波紋模様と実用性を長く楽しむことができます。
堺孝行33層ダマスカス柳刃包丁は、そうしたダマスカス鋼のメリットを存分に活かした包丁です。切れ味は芯材VG10の鋭さと堺の伝統技術による薄い刃付けによって非常にシャープで、マグロやブリのような大きな柵も滑らかな引き心地で切り分けられます。
硬度自体は前述の青紙スーパーほど高くはないものの、そのぶん刃が欠けにくく扱いやすい鋭さと言えます。
また両刃かつステンレス鋼主体の構造のため錆を気にする負担が少なく、忙しい現場でも取り回しが楽です。実際に「ダマスカス包丁は錆びに強く、台所で使う上で大きな魅力」という指摘もあるほどで、調理中にいちいち水気を拭わなくても錆の心配が少ないのはプロにとって助かります。
刀身の33層模様は一つ一つ柄が異なるため所有欲を満たしてくれますし、ハンマーテクスチャのおかげで食材の切り離れも良好です。耐久性にも優れ、長期間の使用にも耐える信頼性を備えているため、見た目だけでなく道具としても末永く活躍してくれるでしょう。
初めてこの包丁を握った時、その美しいダマスカス模様に見惚れました。握りのカウンターで使っているとお客様から『綺麗な包丁ですね』と声をかけられることもあります。切れ味も素晴らしく、タイやサーモンの柵もスッと引けてストレスがありません。ステンレス鋼なので酢飯や刺身に添える柑橘の酸に触れても錆びの心配が少なく、神経質にならずに仕事に集中できるのがありがたいですね。毎晩の包丁管理も、水洗い後にしっかり拭くだけで簡単なので助かっています。
会席料理の刺身盛り付けで愛用しています。薄造りにするフグでも、この柳刃なら紙のように薄い切り身を安定して引き出せます。両刃なのでまっすぐ引きやすく、扱いに癖がないですね。何より刃の模様が美しく、白木のまな板の上で映えるので調理していて気分が上がります。お造りを盛った後にサッと布巾で拭くだけで次の仕事に移れ、錆を気にしてバタバタしなくて良いのも現場では大助かりです。見た目に惹かれて購入しましたが、実用性も十分すぎるほどで、まさに買って良かった一本です。
第9位:實光刃物「【銀三】刺身包丁」


切れ味 ★★★★☆ | 炭素鋼由来の驚くべき切れ味を誇ります。銀三鋼は白紙鋼や青紙鋼にも匹敵する鋭い刃が付くため、その切れ味はプロも認める一級品です。実際「白鋼に負けないくらいの切れ味」を発揮できるとされ、刺身を引いた際にも抵抗なくスッと刃が入ります。 |
刃持ち ★★★★☆ | 刃の持続性は非常に良好です。適切な焼入れにより硬度HRC59〜62程度に達する銀三鋼は、高い硬度と粘りのバランスが取れており、鋭さが長持ちします。実用上は数十尾の魚を連続で捌いても切れ味の低下がほとんど感じられないほどで、プロの現場でも頻繁な砥ぎ直しを必要としません。 |
錆びにくさ ★★★★★ | ステンレス鋼である銀三鋼の最大の利点の一つが高い耐腐食性です。クロム含有により錆に強く、和包丁でありながら水気や食材に対する耐性が高いため、錆によるトラブルが起きにくい仕様です。刺身包丁は生の魚を扱うため濡れる機会も多いですが、銀三鋼なら神経質に拭き上げなくとも錆びにくく安心感があります。 |
メンテナンス ★★★☆☆ | 錆びにくいため日常の手入れは拭き取り中心で簡単ですし、切れ味が落ちても砥石で比較的容易に復活させられます。銀三鋼はステンレス系では研ぎやすい部類で、鋼の刃物を研ぎ慣れない方でも扱いやすいです。實光刃物でも「メンテナンスが容易」で「和包丁入門の方にも最適」と紹介されており、プロだけでなく家庭で使う場合でも負担が少ないでしょう。 |
美しさ ★★★★★ | 伝統工芸品の趣きを持つ美しい包丁です。鏡面に近い霞模様の刃肌や細身で長寸なシルエットには凛とした品格があり、手に取った瞬間に職人技の結晶だと実感できます。黒い水牛口輪と淡黄色の朴木柄のコントラストも上品で、和の雰囲気を醸し出しています。 |
価格 | 30,800円(税込) 210mm 35,860円(税込) 240mm 43,120円(税込) 270mm 54,780円(税込) 300mm 65,230円(税込) 330mm 84,370円(税込) 360mm |
第5位は實光刃物の【銀三】刺身包丁です。
實光刃物は100年以上にわたり、包丁や和包丁を中心に製造してきた老舗ブランドです。堺の刃物づくりの歴史は600年以上とされ、実光刃物もその中で培われた鍛造技術や研磨技術を受け継いでいます。
伝統的な製法や厳選された素材を用いて、一本一本丁寧に仕上げられています。切れ味の鋭さや耐久性に優れ、プロの料理人から家庭のキッチンまで幅広く支持を受けています。
刃材は名前の通り銀紙3号です。銀紙3号は比較的鋭い切れ味をもつステンレス鋼です。通常の使用では十分錆びにくく、錆びたとしても炭素鋼に近い感覚で研ぐことが可能です。
価格が若干高い点は難点ですが、まるで日本刀のように見た目も非常に美しく芸術性が高い点も評価が高いポイントです。
私は江戸前寿司の職人をしており、日々様々な包丁を使い分けています。この實光の銀三刺身包丁を握った第一印象は、その手に吸い付くような馴染みと程よい重量バランスでした。早速、朝一番に市場から届いた新鮮なマグロの柵を引いてみると、驚くほどスムーズに刃が入りました。刃先を刃元から先端まで大きく使って一気に引き切ると、マグロの断面はまるで硝子のように艶やかです。切れ味が鋭いおかげで身の細胞を潰さずに断てるので、切り口に水分がにじまず光沢が残ります。お陰でネタの鮮度が長持ちし、シャリに乗せても魚本来の香りと舌触りが際立つのを感じました。
和食厨房で働く私は、刺身包丁を刺身盛りだけでなく様々な場面で活用します。實光の銀三刺身包丁を導入してからというもの、その万能さと扱いやすさに助けられています。まず刺身を引く仕事では、この包丁の切れ味と長さが存分に威力を発揮します。例えば会席料理の造り盛りでタイやヒラメの薄造りを作る際、銀三の柳刃なら刃を寝かせて丁寧に引くだけで、透き通るような薄い切り身が連続して取れます。包丁の先までしっかり研ぎ上げられているので、魚の皮引きも驚くほど簡単です。カレイの身と皮の間に刃を滑り込ませ、そのまま一気に引き抜けば、身を無駄にせず綺麗に皮だけを剥がすことができます。
まとめ
当記事では初心者むけとプロむけでわけておすすめの刺身包丁をお伝えしてきました。
初心者の方はある程度の切れ味を求めながらも扱いやすさやメンテナンスの簡単さに重点を置くのがよいでしょう。
プロの方は切れ味により出来栄えや味に関わってくるので切れ味を重視して選んでいくのがよいです。その中でメンテナンスが容易にできる炭素鋼の刺身包丁が有力な選択肢となってきます。
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